美人女医と看護師に仕組まれた罠
十九
「川谷さーん。川谷吾作さーん。血圧測定ですよぉ~。」
非番明けの日の巡回で、日菜子は血圧測定の為に川谷吾作の部屋まできてカーテン越しに声を掛ける。
(あれっ? 寝てるのかな・・・。)
返事がないので、カーテンをそーっと開けて中を窺う日菜子にベッドに腰掛けている吾作の背中が見えた。
「なあんだ。居るんじゃない。川谷さん?」
カーテンの中に入ろうとして日菜子ははっとして動きを止める。
吾作の肩越しにちらっとだけ見えたのは吾作が片手を当てている股間から覗いた陰茎の先で、明らかにそれは勃起していた。吾作は何かを見ながら一心不乱にオナニーをしているのだった。
(きゃっ・・・。)
事態に気づいて慌ててカーテンの外に出ようとする日菜子は、テーブルに置かれた吾作の補聴器が置かれているのを目にする。吾作は補聴器を外して自慰に耽っていたので日菜子の声に気づかなかったのだ。
慌てて部屋から出ようして日菜子は傍に置かれていたバケツを蹴飛ばしてしまい、それがけたたましく音を立てる。
(しまったっ・・・。)
カーテンの向こう側ではさすがに気配に気づいたらしい吾作が慌てて身繕いしているのが分かる。部屋の中に入ったのを気づかれてしまった日菜子はそのまま立ち去る訳にもゆかず、カーテン越しに再度声を掛けてみる。
「あ、あの・・・。川谷・・・さん?」
「あ、日菜子ちゃん?」
「ええ。血圧の検診に来たんですけど・・・。」
「あ、そう。ちょ、ちょっと待ってね。あ、もういいよ。どうぞ。」
日菜子が血圧測定器のカートを押してカーテンの中に再び入り込む。吾作はすでに補聴器を耳に嵌め込んでいた。血圧測定器を吾作が腰掛けている側に移そうとすると、吾作は何やら慌ててシーツの奥に隠した様子だった。しかしそのせいで別のものが枕元からバサッと床に落ちた。
「あれ? 何か落ちましたよ。」
「えっ?」
吾作は別のものをシーツの下に隠すのに気を取られていて、言われて初めて気づく。
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