妄想小説
思春期
八
麗花のほうは、男子たちから注目されていただけあって、この「スカートめくり」という悪ふざけの餌食になることは多かった。これをやられてすぐに泣きだしてしまうという弱弱しいところが余計に男達の嗜虐心を煽ってしまったこともあった。
或る時、この悪ふざけが昂じて麗花に後ろからそっと近づいた男子生徒に依って麗花がスカートの中に突っ込まれた両手でパンツを下まで下されてしまうという事件が起こった。麗花は為す術もなく、そのまま顔を蔽って泣き出してしまったのだが、それを知った姉の智花が走り寄ってきて男達を両手を広げて制したのだった。
「貴方達、妹に何てことするの。絶対許さないわよ。」
いきりたつ姉の姿に一旦はたじろいだ男子生徒たちだったが、その後じわりじわりと姉の智花の方にもにじり寄っていったのだ。
「そんなに言うのなら、今度はお前を代りに同じ目に遭わせてやるぜ。」
男子生徒等は智花のスカートに四方から手を伸ばし始めたのだが、智花は少しもたじろがなかった。そればかりか男達を睨みつけて一蹴したのだった。
「あんた達、そんな卑劣なことするなら徹底的に闘うわよ。」
「へえ、姉貴のほうは随分威勢がいいじゃねえかよ。おい、ガムテープ持ってこい。こいつをそれでぐるぐる巻きにしちまうんだ。」
いつの間にか用意していたらしいガムテープを引っ張って長く伸ばすと、男二人でテープを横に引いて智花のほうへ向かってくる。咄嗟に智花は手で除けようとするが、逆に粘着力のつよいテープに腕を取られてしまう。
「おい。こいつの周りをぐるっと廻ってテープで縛りつけてしまえ。」
智花がもがこうとすればするほど、ガムテープは智花の腕と身体に絡みついてきてしまう。
「いやっ。止めなさいよ。」
「おぅ。こいつの口もテープで塞いじまえ。」
智花は口までガムテープで封じられてしまう。
「ほれっ。これで手も足も出まい。さ、お前もパンツ、下ろしてやるからな。」
男達の手が智花のスカートを掴む。その瞬間に後ろから白い煙が巻き起こって男達は一瞬目が眩む。
「な、何だ、これは・・・。」
誰かが消火器の栓を抜いて、智花に掴みかかっていた男達に噴きかけたのだった。
その一撃に男達のほうがたじろいで、逃げていったのだった。
智花の後ろに立っていたのは、消火器を手にした琢也だったのだ。その智花も消火器の白い煙に咽てうずくまっていて助けてくれた琢也には気づいていない。
「早くお姉ちゃんを解いてやれよ。」
そう妹の麗花の方に声だけ掛けておいて、琢也はさっと立ち去ってしまう。
「お姉ちゃん、大丈夫? 今、このガムテープ解いてあげるわ。」
まず口を蔽っていたガムテープを先に剥して貰って、妹に訊ねる。
「どうしたの? 何があったの?」
「消火器であいつらを追い払った奴がいたの。」
「え。誰なの、その人。」
「さあ、よく見えなかったから。」
麗花はぐるぐる巻きにされている姉の智花のガムテープを剥してやりながら、空恍けて誰だったのかは教えないのだった。
琢也もあの時の光景を思い出していた。智花が悪ガキ達にパンツを下ろされてしまうと思った時には咄嗟に手近にあった消火器を手にしていた。琢也は危機一髪で智花を救ったのだったが、その後で、もしかしたら下ろされてしまったかもしれない智花のパンツを想像してはいた。しかし今まさに琢也の目の前には本物の智花の無防備に露わにされた真っ白な下着が見えていて、それに琢也は惹きつけられていたのだった。
次へ 先頭へ