妄想小説
思春期
五
琢也は身体の自由が利かないのが、自分が荒縄でぐるぐる巻きに縛り付けられているせいであるのに気づく。すぐに声を挙げようとするのだが、その声もくぐもってしまう。猿轡を咬まされているせいなのだった。
「うぐうぐっ・・・。」
どうしてこんな事になっているのか皆目見当もつかない。その琢也の目の前に男三人に両腕を掴まれた茉莉子が連れて来られる。
(ま、茉莉子っ・・・。)
「い、嫌よ。放してっ。」
茉莉子が挙げる悲鳴のような声に男達は薄嗤いを浮かべながら、茉莉子の身体を壁の方へ突き飛ばす。足がもつれて床に転がり込む茉莉子は、翻ってしまいそうになるスカートの裾を必死で抑える。
「何するの? やめてよ。」
「へっへっへっ。お前、逆立ちが得意なんだってな。ここでそれをやって見せろや。」
「逆立ちですって? 嫌よ。そんな事したら、スカートが捲れちゃうじゃないの。」
「だが、こいつにはやって見せたって言うじゃないか。」
男たちがぐるぐる巻きに縛られている琢也のほうを振り返る。茉莉子もやっと気がついたようで琢也と目が合う。
「琢也じゃないの・・・。え、どうして?」
「お前に言うことを聞かせるためさ。こいつを傷めつけられたくなかったら素直に言うことを聞くことだな。」
「なんて酷いこと・・・。卑怯よ。」
「さ、どうするんだい? おとなしく言うことを聞いて逆立ちをしてみせるのか、それとも今ここでこいつが傷めつけられるのを見守るかい?」
「ううっ・・・。」
(駄目だ、茉莉子。こいつらの言う事なんか聞く必要はないんだ。やめろっ。)
そう叫んでいるつもりだが琢也の心の声は、もぐもぐいう呻き声にしかならない。
「わかったわ。逆立ち、すればいいんでしょ。」
「わかったら、さっさとやって見せろ。」
茉莉子は唇を噛んで口惜しそうな顔をしてみせるが、覚悟を決めたようだった。
「えいっ。」
掛け声と共に茉莉子の足が床を蹴る。
「ひょうっ。いい眺めだぜ。パンツ、丸見えっ。」
囃し立てる声に男達を睨みつけながら口惜しさを剥き出しにする茉莉子だが、さすがに丸見えになったパンツを見られて恥ずかしさに次第に顔を紅潮させていく。
「おう、こいつ。お前の丸見えのパンツをみて、あそこ勃起させてやんの。ズボンが膨らんでるぜ。」
自分の方を振り返った男達の一人にそう言われて、琢也は自分の意志に反して股間がはち切れそうに膨らんできているのに気づく。
「い、嫌っ。琢也、見ないでっ・・・。」
(ああ、茉莉子っ・・・。これは仕方ないんだよ。ゆるしておくれ・・・。)
身体の自由を奪っている荒縄を何とか振り解こうと、もがき続ける琢也は何時の間にか自分の手にしっかりと毛布が握られているのに気づく。
(あれっ。何だ、これは・・・。)
はっと気づくと琢也は自分の部屋のベッドの上で必死に毛布を掴んでいるのだった。
(えっ。夢・・・だったのか? 何だかアイツのせいで変な夢、見ちゃったみたいだな。)
琢也は目をこすりながらも、パジャマの下で股間がいつものように朝立ちしているのに気づくのだった。
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