妄想小説
思春期
三十六
「服は全部、廊下に投げ捨てておくんだぞ。はいてていいのは靴だけだ。」
(はいてていいのは)という言葉から下着すら許されないことを知る。服従する決意で深夜の教室までやってきた以上、もう男のいうなりになるしかないのだと覚悟を決め、薫は服を脱ぎ始める。最後に足から抜き取ったショーツを廊下にポトリと落すと、薫は再び教室の扉を閉める。
全裸の白い肌がスポットライトに照らされ、浮き上がって光っているのが分かる。
「じゃあ、まず真ん中に立って自己紹介して貰おうか。」
言われた通り教壇の真ん中に立つと、何時もは置いてある筈の教卓が見当たらない。
(全裸の格好がよく見えるようにということかしら・・・。)
一旦はそう思い掛けた薫だったが、そんなに甘くないのではと思い返す。
(ま、まさか・・・。)
不吉な予感に再度手を目の上に翳して暗闇の方に目を凝らしてみる。スポットライトが置かれている場所から少し離れたところに、赤い小さな点が灯っているのがかろうじて見て取れる。
(ビデオカメラ?)
薫の嫌な予感は的中した。全裸になって授業をするのを撮影しようというのだとやっと気づく。しかしもう後には引けないのだった。
「さ、早く自己紹介をするんだ。」
「わ、わかりました。・・・・。あの・・・・。わ、わたしはこの学校の数学教師をしています・・・、井上薫といいます。」
「学校名もちゃんと言うんだ。クラス名もな。やり直しっ。」
「うっ・・・。わ、わたしはここ、XX中学の数学教師の・・・、井上薫といいます。一年八組の担任もやっています。」
薫はこのビデオを誰が見るのだろうと思いながら、個人情報を言わされることが後でどんな問題を引き起こすかを思案しながら喋っていた。
「一番前の席に、お前がこれから喋る台詞を書いたスケッチブックが置いてある。それを一枚ずつ確認しながら喋るんだ。」
そう言われて今まで逆光で気づかなかったが、確かにスケッチブックが一番前の席に置かれているのが分かる。教壇を一段降りて最初の頁をさっと読んでみる。
「わ、わたくしは・・・。あ、ある方の・・・奴隷です。性の・・・奴隷です。その方の言い付けには何でも従がう奴隷です。これからわたしがやることをご覧になればそれが分かる筈です。」
教壇の上でスケッチブックに大きな字で書かれている台詞を言い終わると、もう一度机の方に戻ってスケッチブックを一枚めくる。
(え・・・、そんな事っ。)
スケッチブックには台詞ではなく、ト書きで薫が次にしなければならないことが書かれていた。
『教壇の脇にある教卓の上の剃刀とシェービングジェルを使ってあそこの毛を剃り落す事。』
薫が教壇の横をみやると、いつもは教壇の前に置いてある教卓がそちらに移されていて何かが置いてあるのが分かった。薫がゆっくりそちらに向かうと、置いてあったのはT字型の剃刀とスプレー式のシェービングジェル、そしてタオルだった。
(こんな事・・・。)
出来るわけがないと言う言葉は呑みこまざるを得なかった。口惜しさに唇を噛みしめると、剃刀とジェルのスプレーだけ取って教壇の中央に戻る。
シューっという音と共に泡がまだ生え揃っている薫の股間を埋め尽くしていく。
ビデオカメラの前で自分の股間を剃り落さなければならないという辱めに、何とか逃れる方法はないかと薫は思案するが、命令に従うほかはないのだと観念する。
ジョリッ。ジョリッ。
非情な音と共に、白い泡で隠されていた部分が次第に露わになる。最後に置いてあったタオルで股間を拭うと、幼児のような縦一文字の割れ目が露わになってしまうのがわかり、堪らず薫は両手を股間にあててその部分を隠す。
「手で隠すんじゃない。」
厳しい命令が闇の中から聞こえてくる。薫が命令に従って両手を身体の脇にずらすと、草叢を失った性器が卑猥な割れ目となってスポットライトの強烈な明りに照らし出されるのだった。
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