近いっ

妄想小説

思春期



 四

 (ち、近いっ・・・。)
 茉莉子が琢也に頬をくっつけんばかりに顔を近づけてデッサンを覗きこんでいるのだった。
 「ねえ、樫山クン。樫山クンって、性欲・・・、ある?」
 突然、茉莉子の口から聞き慣れない言葉が飛び出してきたので琢也は一層どぎまぎする。
 「え、セ、セーヨク?」
 「そうよ。ムラムラってするやつ。って言うか、そうなるらしいってしか知らないんだけど。さっきボクのスカートの中にパンツ、見たでしょ? ああいうのでムラムラっとかする?」
 「し、知らないよ。そんな事・・・。」
 「あら、だって・・・。男の子って、ムラムラしたり興奮したりすると、あそこが硬くなるんでしょ? 勃起っていうの・・・。」
 茉莉子が事も無げに『勃起』などという言葉を使うのでますます琢也は慌てた。確かに美術準備室に入る前に茉莉子が逆立ちをして見せた時、スカートの中に真っ白なパンティが覗いたので琢也はあそこが硬くなりかけたのに気づいていた。
 (こいつ、気づいていたのかな・・・。)
 「ワタシね。性欲っていうのがどんなものなのかが判らないの。でもすっごく興味があるの。どんな時に男の子はあそこを硬くするんだろうって。」
 「そんなの・・・。判ってどうするんだよ。」
 「男はいいわよね。形に現れるから。あそこが硬くなってくると、ああ今感じてるんだなって判るんでしょ。女はそういうのが無いからね。」
 「女だって勃起はするんじゃないの? よく知らないけど、乳首が尖ったり・・・。」
 (クリトリスが勃起したり・・・)と言いそうになって慌てて言葉を呑みこんだ琢也だった。琢也は女性が感じた時に、本当にクリトリスが勃起するのかどうかは知らない。というか、見た事は少なくともないのだった。
 「そうかあ。乳首かあ・・・。それは今まで無いなあ。ねえ、キスしてみてくれない? 乳首が立つか確かめてみるから。」
 「えっ? お前が性欲を感じるか確かめる為にキスするのか?」
 「そうよ。キス。したこと、ない?」
 「な、ないよ。」
 「そ。・・・。じゃ、ほらっ。」
 茉莉子は目を瞑って唇を尖らせる。
 琢也は目の前で女の子が目を瞑って唇を待っているのを見て、どうしたものか戸惑う。しかしその誘惑には打ち勝つことが出来なかった。茉莉子の両肩をやさしく抱くと自分に引き寄せながら唇を合わせてみる。
 (うっ、甘い・・・。いい匂いがするっ。)
 初めての経験に心臓は高鳴っていた。それと同時に下半身にも異変を感じる。(いけない)と思いながらもあそこが怒張し始めるのを抑えきれない。しかし、その場所にあろうことか茉莉子の手が伸びてきたのを感じて慌てて唇を離す。
 「うわっ。何すんのさ。」
 「ごめん。驚いた? でも、勃起してたわね、やっぱり。ワタシの方はわかんなかった。」
 見るといつの間にか茉莉子は自分の胸元のブラウスの中に片手を突っ込んでいた。
 「やっぱり男の子のほうが判りやすいのね。いいなあ、男は・・・。」
 琢也は茉莉子が何に憧れだか嫉妬だかを感じているのか意味が分からない。
 「ね、また今度、性欲の事、教えてね。」
 茉莉子は琢也にウィンクしてみせるとスケッチブックを持って立上っていた。

茉莉子顔

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