ジュスティーヌ

妄想小説

思春期



 十七

 「それは実際に縛られる女の人の方じゃないとわからないんじゃないかな。」
 「そうかあ、それもそうね。でも、男の人も女が縛られるシーンって興奮するんじゃない?」
 「そりゃあ、そういう小説があるぐらいだからね。日本に限らず、外国だってあるしね。」
 「え、外国って?」
 「チャタレー夫人とかね。あ、チャタレーは違うかも・・・。」
 「チャタレー夫人の恋人の事?」
 「ああ、そう。D・H・ロレンスのね。かなり官能的な小説だけど、もしかしたら縛られるシーンはなかったかも・・・。あ、もちろん、マルキ・ド・サドはその定番だね。」
 「マルキ・・・、何?」
 「サド侯爵だよ。ジュスティーヌとか悪徳の栄えとか・・・。」
 「それって、サドマゾのサド?」
 「サドマゾは知ってるのか。」
 「読んだことはないけど・・・。へえ、文学なんだ。」
 団鬼六は花と蛇の極一部を立ち読みしたに過ぎないのだが、自分の得意な西洋文学のほうへ話が持ってゆけたので、話題は次々に出てくる。
 「映画だとO嬢の物語とかが有名だね。」
 「オー・ジョウ・・・?」
 「ああ、好きでもない男に縛られて次第に陶酔してゆくって話だ。」
 「ねえ、お願いがあるのだけれど・・・。」
 「わたしを縛ってみてくれ・・・とか?」
 「え、どうしてわかったの?」
 「だって、どうしたら性欲を感じるのか、いろいろ試したいみたいな事、言ってなかったか?」
 「えへっ。そうなの。」
 「そんなの、見つかったら拙いからな。」
 「だからあの・・・、例の体育館用具室の上の部屋。」
 「ああ、あそこかあ。」
 琢也はその部屋に二人で居るところを想像しながら、股間に変化が生じているのを感じ、茉莉子に悟られないように身体を動かすのだった。
 「あの部屋はおそらく誰も入って来ないとは思うけど、問題は体育館の方だな。放課後は殆ど何処かの運動部が必ず使ってるし、土日だって朝から夕方まで部活の練習で埋まってるからな。」
 「そうなのよ。だからやるなら昼休みしかないって思うの。」
 「え、昼休みの間にあそこに忍び込んで、それを試してまた午後の授業の前に戻って来るのか。結構、忙しいな。」
 「まあじっくり味わっている時間はないけど、体験学習ぐらいなら出来るんじゃない?」
 「体験学習かあ・・・。ま、いいか。」
 早速、次の日の昼休みに示し合わせて、体育館用具倉庫二階の旧演劇部倉庫に忍び込むことになったのだった。

茉莉子顔

  次へ   先頭へ




ページのトップへ戻る