妄想小説
思春期
四十三
「あ、井上先生。校長とお話しでしたか。」
校長室を出てきた薫を待ち受けていたのは、麗花だった。
「どうしたの、上原さん。私に何か御用?」
「ええ、私も先生とお話ししたいことがあって。」
「あら、何かしら。」
「ここでは、ちょっと。二人だけで話したいんです。出来れば何処か・・・。あ、例えば屋上とか。」
「え?」
麗花の口から屋上という言葉が出ただけで、薫は不吉なものを感じるのだった。
「私、先生の秘密を知ってるんです。」
麗花がどうしてもというので、亨と密会した屋上へ麗花と共にやって来た薫だったが、薫の不吉な予感はどんどん現実のものになってゆく。
「秘密って・・・? いったい、何の事かしら。」
「皆んなに知られたらとっても困ることです。もう学校にも居られなくなるような・・・。」
「麗花さん。あなた、もしかして・・・。」
麗花が自分をここで連れて来たのは偶然ではないような気がしてきた薫だった。
「でも、先生が私の言う事を聞いてくださったら、絶対にその話は誰にもしません。」
「あなたの言う事を聞く?」
「そんなに難しいことではありませんよ、先生にとってはね。先生の為にもなることかもしれませんよ。」
麗花は謎の微笑を浮かべて薫に秘密を守って貰う為に何をしたらいいのかを教えたのだった。
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