妄想小説
思春期
三十三
純一の性急な手がスカートの方に下ろされてきて、裾をたくし上げ始めて初めて薫は慌てだした。
「駄目よ、そんな事・・・。」
抗議しようとした薫の口が、純一の唇で塞がれてしまう。スカートの裾を手繰り上げた手は既にショーツに掛かっていた。あっと言う間に下穿きはずり下ろされてしまう。純一の股間は既にビンビンに屹立していた。下着を脱がしてしまうのももどかしいように、膝頭にパンティをまだ着けたまま薫は脚を折り曲げられて持ち上げられ、付け根に猛々しく勃起したそのモノを挿しこまれてしまう。まだ充分に潤っていなかった為に陰唇に痛みが走り、薫は顔を歪める。
「あ、駄目っ・・・。」
しかし身体の中に男のモノを咥えこんでしまうと、気持ちの良さのほうがまさってきてしまう。
「ああっ・・・。」
薫の脳裏に一晩中犯され続けた夜の悪夢が蘇ってくる。
(あの時のいまわしい記憶を、今純一が上書きして消そうとしてくれているのだ。)
薫は無理やり、そう思おうとする。しかし、次の瞬間、薫は純一が中出ししようとしているのではという疑惑が湧いてくる。
「ね。駄目よ、今は。危険日なの・・・。」
「いいじゃないか。ボクたち。いずれ結婚するんだから。」
「え、ああ・・・。」
中出しされると困る本当の理由を言えない薫はそれ以上強く言えなくなってしまう。
「ああっ・・・。」
純一が呻き声を挙げたのと、自分の身体の奥に熱いものが流れた感触から、薫は純一が自分の膣内で初めて果てたのを知った。
「やっぱり縛られてすると、いいんだね。」
純一が突然ぼそっとそう言ったことで、薫は自分が両手を後ろ手に縛られていたことを思い出す。ただ、純一の(やっぱり)という言葉の意味だけが薫には理解出来ないでいたのだった。
「井上先生、こんなの来てましたよ。」
職員室で授業の準備をしていた薫は、事務の女性が封筒を持って現れたのに顔を上げる。
「あ、ありがとう。あれっ、変ね。これ、切手も貼ってなければ消印もない。」
封筒は封はしてあるものの、学校の住所さえ書かれておらず、ただ『井上 薫様 親展』とだけあった。
「郵便で届いたんじゃなくて、どうも学校の郵便受けに直接入れられたみたいなんです。でも、これ先生宛で間違いないですよね。」
「ええ、そうみたいね。ありがとう。」
不審に思いながらも封筒を受け取った薫だった。例の強姦の噂も、その後薫が一日休んだだけで普通に出勤していることから、どうもガセネタだったらしいと皆に思われ始めてやっと落ち着いてきたところだった。薫はしかし嫌な予感がして職員室では開封せず、女子職員トイレに持ち込んで個室の中でそっと開いたのだった。
中から出てきたのは寝かされている奇妙な女性の写真が印刷された一枚の紙切れだった。奇妙というのは、女性が身につけていたらしいスカートを着たまま捲り上げられて上半身に被されて眠り込んだ姿だったからだ。勿論下半身は下着が丸見えになっている。顔の部分は黒く塗りつぶされているが自分であるのはすぐに分かった。そしてその格好から思い出したのは、少し前に生徒等の間で騒ぎになっていた茶巾縛りの晒し者の事だった。
(あの晩に撮られたものに違いない・・・。)
そう思ってみると、写真に写っている女性が寝かされているのは体育館に違いなかった。
紙の裏をみると、金釘流でわざと筆跡を隠した文が書かれている。
『XX月XX日、午後2時に駅前のカフェテラスという喫茶店に来い。超ミニのスカートを穿いて来ること。』
(どういう事、これは?)
薫はさんざんに犯された後、解放されたのだったが、それで全てが済んだとは思えなかった。自分を犯した男がそれをネタに何かまた仕掛けてくるような気がしてならなかったのだ。
顔は見ているが、薫の知らない男だった。向こうは自分の事を知っているらしいがこちらは知らないので突き止めようがなかった。男について何かの手掛かりを掴むためには、呼出しに応じてみるしかないと薫は思った。顔を塗りつぶされてスカートを捲られた女の写真があるからと言って、それを証拠に強姦の被害届を出すという訳にもゆかない。男に逢ってみて、何か尻尾を掴むしかないと薫は思ったのだ。
薫は指定された休日の午後、自分が持っている一番丈の短いスカートを穿いて駅へ向かった。ミニスカートは学校への出勤の際には決して着ることがないが、休日のデートでは穿いてゆくことが多かった。婚約者の磯部がそれを望むからだ。薫は自分の脚に自信がない訳ではない。むしろミニスカートは自分をより魅力的に見せるというのは自覚していた。しかし自分を強姦した相手の要求に従ってそれを穿いていくのは屈辱的であり不安もあった。しかし相手の要求に背くことも出来ないのは重々承知していた。相手を見極める重要な手掛かりを得る場なのだ。
指定された駅前のカフェテラスというのはどんな場所か薫もよく知っていた。駅前スクランブル交差点に面したビルの二階にあって、窓側は全面ガラス張りなのだ。それは交差点側から店に入った薫の様子が外からでもよく確認出来ることを意味していた。それが分かっていての指定なのだろうと薫も思った。
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