妄想小説
狙われていた新婚花嫁
九
裕也と共にホテルの部屋に戻った優香は、ドアの下に新聞とともに一通の封筒が差し挟まれているのを見つける。
(何だろう・・・。)
何となく嫌な予感がした優香は新聞の裏に隠しながらそれを取り上げる。
「何? 何かあった?」
「ああ、英字新聞よ。日本人が多くなったって言っても、やっぱり西洋人が多いものね。読む?」
「チェッ。僕が英語、読めないの知ってるくせに。」
「あ、そうだったわね。」
ドアの鍵を開けてくれている間に優香は新聞の間に隠した封筒を背中に持つ。
「ねえ、先にトイレ、使っていい?」
「ああ、いいよ。どうぞ。」
出来るだけさりげなくバスルームに入ると、念の為に鍵を掛けた後、隠し持ってきた封筒を開けてみる。
中から出て来た一枚の紙を観た優香の顔がさっと蒼褪める。四つに折り畳んだ紙はパソコンを使ってプリントアウトしたものらしかった。内側にはデジカメで撮られた写真を印刷したものが刷られているようだ。そこに映っているのは眠りこけている一人の女性の姿なのだが短い裾のワンピースからはみ出ている脚を股間ぎりぎりまで露わにしているその姿はどう見ても優香自身に違いないのだった。
ワンピースの裾からぎりぎりはみ出てしまっている股間は薄暗いのではっきりしないが、下着を着けていないようにも見える。その股間に叢むらがあるのかどうかまでは見て取れない。
眠りこけている自分のすぐ傍に丸められた布きれのようなものは、脱がされたばかりの自分の下着に違いないとすぐに判ったのだ。
紙の裏をひっくり返してみると、一行、英文がタイプされているのに気づいた。
「You must obey my order. First, you should not wear culottes in stead of mini skirts.(私の命令に従うこと。まずキュロットは禁止するのでミニスカートにしろ。)」
自分に宛てられた脅迫であるのは間違いなかった。しかもその送り主は今朝の自分の姿を見たのに違いないのだった。
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