妄想小説
狙われていた新婚花嫁
三十四
「なあ、そろそろこのホテルの中も飽きてきたし、今日はホテルの外に出掛けてみないか?」
「え、ホテルの外って・・・。何処か行きたいところでもあるの。」
「実はさ。ほらって、ジミーっていう案内人がいたじゃないか。彼がこの島にもカジノがあるっていうんだ。旅行者しか入れない場所なんだって。彼が送ってくれるっていうからちょっと行ってみたいなと思ってさ。」
「私はカジノなんか行きたくはないわ。」
「そう言うだろうと思った。でさ、ジミーが俺をカジノまで送ってったあと、お前の方もショッピングセンターで買物が出来るように連れてってくれるんだって。お前、買物がしたいって言ってたじゃないか。買物が終わるまで外で待っててくれるんだって。」
話を聞いた途端、優香はジミーが何か悪い企み事をしているのを予感した。しかしだからと言って断れないのは分っているのだった。
「貴方がどうしてもって言うのならいいわよ。わたしショッピングで時間潰してる。」
「そんな言い方しなくても・・・。俺の方がショッピングの間、カジノで時間潰してるって見方だって出来るんだからさ。」
「まあ、どっちでもいいわ。貴方、行きたいんでしょ。その間、私もしたいようにするから。」
「じゃ、決まりだな。俺、ジミーに車、頼んでくるよ。」
裕也がジミーに入れ知恵をされたのは明らかだった。裕也が居なくなった途端、ジミーは自分を好き放題連れ回すつもりなのだと分かっていてもそうせざるを得ないのだった。
裕也がジミーに車の手配を頼みに行く間、優香は外に出掛ける服をどうしようか考えていた。どんな所に行くのか判らないので、ミニは避けてキュロットパンツにしようと考えてそれは諦めざるを得ないことに気づいたのだ。裕也がその格好はババ臭いと言ったからではなく、最初の手紙にあった命令を思い出したのだ。
「You must obey my order. First, you should not wear culottes in stead of mini skirts.(私の命令に従うこと。まずキュロットは禁止するのでミニスカートにしろ。)」
キュロットを禁じられると、持ってきているのは後はミニスカートしかなかった。どんな服を着ていこうが、所詮は無駄なあがきでしかないのだと優香は認めるしかなかった。
その優香が裕也と共にホテルのエントランスに出てみると、怖れていたことが現実になった。ジミーが乗ってきたのは吹き曝しの三輪車を改造したテュクテュクという現地の乗り物だった。狭い車内では膝を立てて乗らざるを得ない上に、外からは丸見えなのだ。
手で常時抑えていないと、スカートの中は外から丸見えだった。しかし裕也はカジノに行くことに興奮していて、そんな事は意にも留めていない風だった。
「OKデスカ? ソレジャ、シュッパツシマスゥ。」
ジミーが振り返って確認するので、優香は慌てて膝の上に手を置いて裾の奥を隠すのだった。
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