妄想小説
狙われていた新婚花嫁
八
「いやあ、昨夜はごめん。何時の間にか寝ちゃったみたいで。」
「あら、いいのよ。だって、結婚式からずっと忙しかったんだもの。こっちへ来るんだって、ずっと飛行機だったから疲れていても当然よ。新婚早々って、そういうものらしいわよ。」
新婚早々、二晩も初夜をすっぽかされたことを昨日の夜までは憤懣やるかたない気持ちでいた優香だったのだが、この朝はゆうべの夜のことを誤魔化すので精一杯なのだった。
「あれっ。今日はそれなの?」
優香がその日、着ることに決めたのはキュロット・スカートだった。ミニスカートばかりではと心配で一着持ってきていたのだった。
「ええ。だって、パンツ見られちゃまずいでしょ?」
「ううむ、それはそうだけど・・・。」
「じゃ、用意出来たら朝食に行きましょうよ。朝はバイキングらしいわよ。」
「ああ、そうだな。」
ホテルのメインダイニングでビュッフェ形式の朝食を採った後、二人してプライベートビーチの海岸を少し歩くことにしたのだった。優香はさりげなくして裕也に気づかれないようにしているが、昨晩自分が連れ込まれていたビーチの倉庫をそれとなく探っておきたかったのだ。
その倉庫はビーチの外れにあった。扉は薄っすらと開いている。
「これは倉庫なのかしら?」
「ああ、ビーチで使うデッキチェアなんかを仕舞ってあるんだろ。レンタルのカヌーやボートもあるみたいだから、今度借りてみようか。」
「ええ、そうね。」
そう言いながらも倉庫の中や、辺りの砂浜をさり気なく見渡す。ゆうべ、ここを去る前にも自分のショーツがその辺に落ちているのではと捜してはみたのだが見つからなかったのだ。明るい時間にもう一度確かめて起きたかったのだった。
(やっぱり奪われて、持ち去られたんだわ。)
持ち去られたものがショーツだけではなく、恥毛までも剃りあげられ持ち去られていることに口惜しささえ覚えたのだった。
「どうしたんだい。そろそろもう戻ろうよ。」
「え? ああ、そうね。行きましょう。」
「やっぱりそのキュロットはババ臭いなあ。よく日本人のオバサンが穿いてるけど、格好いいとはいえないなあ。」
「あら、そうかしら・・・。」
恍けてはみたものの、自分のショーツを奪った男が何処かで見ているのかもしれないと思うと少しの油断も出来ないと優香は思うのだった。
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