妄想小説
狙われていた新婚花嫁
五十一
そんな頃、一人で目覚めた裕也はおぼろげながら昨夜の事を思い返していた。バスルームの少しだけ半開きになったドアの向こう側に、確かに下半身だけ裸のままで化粧直しをしている妻の姿を垣間見て興奮していた。それなのにその時、自分のペニスは勃起してこず萎えて垂れ下がったままだったのだ。
(この旅行に来てからというもの、一度も妻を抱くチャンスを作ることが出来なかった。もしかして、自分はもう妻には欲情を抱くことが出来ないのではないだろうか・・・。)
考えれば考えるほと、不安になり自分に自信を抱けなくなってくるのだ。
(優香は何処へ行ったのだろう。どうして何時までも帰ってこないのだろう。)
不安になった裕也は妻を捜しに出ることにした。妻が行きそうな当てなど全く無い。フロントで聞いてみようかとも思ったが、妻の行く方を捜す夫ほど、みっともない姿はないと思い留まったのだ。しかし、その時コンシェルジュの島崎佳織の事を思い出した。
(佳織さんなら、知っているかもしれない。でも、今朝はレセプションにもロビーにも見当たらなかったなあ。)
そしてプールの事を思い出す。
(そうだ。スイミングのインストラクタもしているからもしかしたらプールかもしれない。)
そう考えた裕也がプールの方へ向かうと今しも更衣室へ入ろうとしている佳織の姿を見つけたのだった。
「佳織さん。」
振向いた佳織が、裕也の姿をみとめてにっこりと微笑み返す。その佳織はまだ水着姿だった。佳織は辺りを見回して誰も居ないことを確認してから足を止める。
「どうしたの、裕也クン。何だか元気、なさそうよ。」
「ああ、妻が散歩に出たっきり帰って来なくて・・・。」
「ああ、奥さんね。なあんだ。真弓、つまんないな。」
「えっ?」
「だって、裕也クン。今日が旅行の最終日でしょ。今日の昼過ぎには帰っちゃうんだもの。」
「ああ、そうだけど・・・。」
「真弓、今日はオフなの。それで朝から泳いでいたの。ねえ、ちょっと待ってくれる。今、着替えてくるから。」
そう言うと女性用更衣室の中へ入って行ってしまう。
(そうだ。佳織さんにキスした時には、あんなに熱くなっていたんだ・・・。)
初めて佳織の唇を奪った時には確かに勃起していたのを思い出した裕也だった。
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