妄想小説
狙われていた新婚花嫁
二十七
放出してしまった後の軽い脱力感の中で、サウナ室のベンチに座りながらも佳織の裸の肩に手を掛けて抱き寄せていた。佳織の方もぴったりと裕也に寄り添うようにしていた。
「暫く、こうやって甘えさせて貰っててもいい?」
「勿論だとも。」
放出してしまったばかりで、もう一度勃起させて抱くには暫く時間が掛かりそうだと裕也も感じていた。
「私、実はこっちに来たばかりの時に、レイプされかけたの。私にも隙があったのね、きっと。こっちの若い男性、ふたりによ。一人に両手を抑えつけられて、もう一人に裸にされたわ。単身ひとりでこんなところに仕事に来たんで、こんな目に遭うんだと諦めかけて、あやうく犯されそうになったけど、最後に大声を出したらホテルの人が駆けつけて来てくれて・・・。」
「未遂には終わったんだけど、それ以来男性恐怖症になっちゃって。特にこちらの男性は駄目。怖くなっちゃうの。だから、日本人の男の人に甘えたくて仕方なかったんだと思う。」
「そうだったんだ。わかるよ。淋しかったんだろ。」
佳織の正直な告白に、愛おしさを感じ始めた裕也だった。
「僕にも告白させて貰えるかい?」
「え、何かしら。」
「実は佳織さんに初めて逢った時から気になっていたんだ。実は君は僕の初恋の人にそっくりなんだ。」
「え、そうなの?」
「ああ、だからこのホテルに来て君に逢った時には何だか運命みたいなものを感じてしまったんだ。君にキスしてしまったのも昔の初恋の人を思い出して、どうにも我慢出来なかったんだ。」
「そうだったの・・・。その人には告白出来たの?」
「いや、声も掛けられなかった。だから君にキス出来た時、夢が叶った気がしたんだ。ごめん。」
「いいのよ、そんな事。ねえ、その人、何ていう名前?」
「え、名前かあ。ちょっとね・・・。」
「いいじゃない。誰にも知られるわけじゃないんだから。」
「真弓だよ。」
「真弓かあ。ふうん・・・。そうだ。私の事、真弓って呼んで。この旅行中だけでいいから。あ、勿論、奥さんの前では駄目よ。奥さんには内緒なんでしょ?」
「そりゃそうだよ。だって、新婚旅行だよ。」
「そうよね。だから私達二人だけの時だけね。真弓さんは貴方のこと、何て?」
「裕也クン・・・かな。」
「わかったわ。裕也クン。真弓、もう行かなくっちゃ。」
「え、行っちゃうの?」
「仕事があるから。でもまた逢ってね。じゃ。」
そう言うと、佳織は裕也を残してサウナ室から出ていってしまったのだった。
次へ 先頭へ