妄想小説
狙われていた新婚花嫁
二十三
少し長めにバスルームで時間を使っている間に、裕也はベッドの上で寝入ってしまっていた。だらしなく仰向けに大の字になって眠っている裕也の股間を触ってみて、何の反応もない事から正体不明になっているのは明らかだった。股間のそれも完全に萎えきっていた。
優香は夜の10時を過ぎるのを待って、昨夜と同じ黒のタイトミニの格好で部屋を出た。ロビーからビーチのほうへ降りる階段を使ってロスメンと呼ばれる塀に囲われた個室群がある区域へと歩いていく。部屋へ届けられた呼出し状の手紙に書いてあったのは昨夜とは違う別のコテージだった。
(あった。これだわ。)
前夜とは違うコテージの番号だったが、造りは殆ど同じ様子だった。二度目なので勝手が判っている分、躊躇いはなかった。同じ様に奥の部屋に丸テーブルがあってスタンドに明りが点っている。同じように一枚の画像がプリントアウトされた紙が置いてある。違っていたのは、写っているのが前日は顔半分だったものが、顔全体にまで広がっていたことだ。
『もし言うことを聞かなければ即刻これをばらまくぞ』という脅しなのだと優香は悟った。
ちらっと裏側に書いてある文章を読むと、同じ造りになっているベランダに出る。もう手枷を嵌めて目隠しのアイマスクを着けるのに躊躇いはなかった。
男は直ぐにやってきたのが気配で感じられた。同じように近づいてきて優香の顎に手を掛ける。その瞬間、優香は思っていた事を確信した。
「貴方、ジミーでしょ。」
男がビクッとしたのが判った。暫く沈黙が続く。やがて男は観念したようだった。いきなり優香のアイマスクを剥ぎ取ると、目の前に立った。優香が思った通り、案内人のジミーだった。
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