優香受付へ

妄想小説

狙われていた新婚花嫁



 二十一

 同じ頃、優香の方はスパのオイルマッサージの受付カウンタの方に居た。レセプションに居た島崎佳織ではない現地のコンシェルジュから、英語で今ならスパのマッサージが空いていると教えられてスパまでやって来ていたのだった。本格的な古式マッサージより、オイルマッサージの方がよりマイルドで初心者向けだと教えられてのことだった。
 「So you want oil massage for one person, right ? (ではオイルマッサージお一人でよろしいのですね?)」
 「Ah, yes. (はい。)」
 「Well, then. Take off your all clothings and go straight down to the booth No.3. Your belongings can be left at the dressing room, and wear this towel to go in. (それではお召し物はお脱ぎになって3番ブースにお進みください。お着物などは更衣室に置いたままで結構です。このタオルをお召しくださいませ。)」
 「All clothings ? (全部・・・なのですか?)」
 優香は一瞬、下着も含めてなのか訊こうとして、そこまで訊くこともないだろうと判断した。オイルを使うので、衣服が汚れることを考慮してなのだろうと思ったのだ。
 ショーツも含めて脱いで全裸になると、渡された大き目のバスタオルだけを身に纏って言われた3番のブースに入ったのだった。
 その個室は、一人が寝そべることが出来るベッドがあるだけのこじんまりとした部屋だった。そのベッドの上にタオルを解いて背中から掛けると、そのまま俯せの格好になる。

ジミー

 「Are you ready for massage ? (マッサージの用意はよろしいですか?)」
 突然の男の声に優香は慌てる。てっきり女性のマッサージ師だと思い込んでいたからだ。しかもその声がどこか聞き覚えのあるものだった。優香は自分がタオルの下は全裸だったことを思い出し、どうしようかと慌てたが、もはや後の祭りで、今更逃げ出すことも出来ない状況だった。
 「アー。アナタ、カ・ジ・タ・ニ・サンデスネ。」
 自分の名前を呼ばれて、優香もそれが自分達を空港からホテルまで迎えにきた案内人のジミーであることに気づいた。
 「あの・・・、ジミーさんですね。案内人の。」
 「ソ、ソデス。オボエテクレテイテ、アリガト。」
 「貴方、スパのマッサージもやっているの?」
 「ハイ。ワタシタチ、イロナコトヤリマス。クウコーピックアップ、カンコーアナイ、ジムトレーナー、ソシテ、マッサージモデス。」
 「ああ、そうだったのね。知らなかったわ。あ、あの・・・。じゃ、お願いします。」
 今更断れないことにも気づいて優香は覚悟を決めることにする。タオルさえ剥がれなければ全裸であることも気づかれないのだと思うことにしたのだった。
 「オイル、ナガシマス。オッケーデスカ?」
 「ええ、お願いします。」

裸尻ジェル

 オイルマッサージは思いの外、気持ちのいいものだった。男性によるマッサージだと思っていた緊張も、その心地良さに次第に解きほぐされていった。足の指先から次第に揉みほぐされていく足裏全体が太腿からタオルの奥の股間の付け根近くにまで及ぶのにも、あまりの心地良さにもうマッサージ師に全てを委ねてもいい気持になっていたのだった。しかし、ジミーの手が優香の首筋の凝りをほぐそうと身体全体を近づけて来た時に、ふと感じたジミーの体臭のような香りに優香はあるデジャブを感じたのだった。
 (え、この匂い。どこかで嗅いだことがある気がする・・・。)
 しかし、その時はそれ以上は思い出すことが出来なかったのだった。

優香

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