妄想小説
狙われていた新婚花嫁
三十五
カジノは観光客しか入れない為、リゾート地の奥にあるので往きは殆ど南国の樹木が鬱蒼と茂るジャングルの中の道を延々進むのだった。迎えの時間を決めて裕也を降ろした後、ジミーと二人きりになって向かうことになっているショッピングセンタは街中にあるのだった。
「チョットトバシマス。リョウテデテスリ、ツカマッテテクダサイ。」
最初のうちは隣に裕也が居たので、テュクテュクがデコボコ道で跳ねることがあっても裕也に掴まればよかったが、後部座席に一人になってゆったり座れる反面、揺れや跳ねには一人で対応しなければならない。優香は両手で手摺りをしっかり握っていなければならない。それは短い裾の奥が無防備になってしまうことを意味していた。ジミーは運転に慣れているのか、しょっちゅうバックミラーで優香の露わになるスカートの奥を覗きこんでくるのが判ってはいたが、どうしようもなかった。
「ジミー、お願い。運転に集中して。バックミラーばかり見ないで。」
そう言ったからといって、言う通りにするとは思えなかった。ジミーにスカートから覗いてしまう下着を存分に覗かれるのは我慢していたが、テュクテュクが次第に市街地に入っていくと、痛いような視線は運転席のジミーだけではなくなってきた。すぐ隣を走るオートバイや別のテュクテュクの運転手からの熱い視線を感じなければならなかったのだ。覗きこまれる度に反対側へ膝頭を逸らすのだが、両側からオートバイやテュクテュクに併走されるともはや隠すことは不可能となってしまう。覗きこむ男たちの中には露骨に口笛や指笛を鳴らして囃し立てる者も居たが、優香は気づかないでいる振りをするしかないのだった。
「ちょっと、ジミー。今の、ショッピングセンタじゃないの。通り過ぎたわよ。」
「ショッピング、シタイデスカ? モットタノシイコトシタイノジャナイデスカ?」
「もっと楽しい事? 何、考えてるの、あなた。」
ジミーがテュクテュクを駐めたのは優香たちが泊っているホテルからちょっと離れた別のリゾートホテルだった。
「ココハ、ムカシハタライテイタコトアリマス。ナカノヨウス、ヨクシッテマス。モグリコンデモヘイキデス。」
勝手知ったる場所という雰囲気でテュクテュクを乗り捨てると、優香をロビーの方へ促すのだった。
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