ロスメン夜景

妄想小説

狙われていた新婚花嫁



 十五

 コテージ番号のついた小型の門のところにはそれぞれ小さな明りが点っているので、どれが何番のコテージなのかすぐ分かるようになっている。
 (2027号室・・・。あった、あれだわ。)
 薄暗がりの中に2027と書かれた金色の文字が浮き上がっていた。門の前まで来て、そっと中の様子を窺ってみる。人の気配は感じられなかった。
 (待っているのかしら。それとも後から来るのだろうか。)
 フロントを出る時に時計を見て、約束の11時まであと5分だったのを確認している。優香には入ってみる事しか選択肢は考えられなかった。
 門から少し歩くと、建物の入り口らしい重そうな木製の扉がある。引いてみると手入れがいいのか、すうっと音も無く開いたのだった。
 中は薄暗かったが、奥の部屋から明りが洩れている。優香がゆっくりそちらに向かっていくと丸いテーブルの上にライトスタンドが点っているのが判る。近寄るとランプの下に一枚の紙切れが置かれている。優香の部屋に届けられた封筒にあったものとほぼ同じだ。
 そこに印刷されていたのは、やはりデジカメで撮られた写真をプリントしたものらしかった。

剃毛現場

 ひと目みて撮られているのは自分だと分かる。下着が腿の途中まで下されていて、捲れ上ったワンピースの裾から剃りあげられたばかりの股間が剥き出しになっている。
 (やはりこんなものまで撮られていたのだわ。)
 優香はそんなものが置いてあることの意味をすぐに悟った。言う事を聞かなければ、これをばらまくぞという脅しなのだろう。紙を裏返してみるとやはりメッセージが打たれていた。
 『Get out to the veranda outside this room. Put on the eye mask and hand cuffs to your both risks. Tie up your both hands together, and put them behind your head. Then just wait. (部屋の外のベランダに出て、そこに置いてある目隠しと手枷を嵌めて頭の後ろに置いて待て。)』
 優香がフレンチ窓の外をみるとベランダになっていて、庭に明りがあるらしくテーブルと椅子が薄明りに照らされているのが判る。ベランダに出てみるとテーブルの上に飛行機で配られたようなアイマスクの目隠しと分厚い革製の手枷らしきものが置いてある。
 優香は先程見せられた写真のコピーを思い出す。
 (言う事に従う他はないのね・・・。)

優香

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