妄想小説
狙われていた新婚花嫁
五十五
「ようこそ、いらっしゃいませ。今、お手続きを・・・。あっ・・・。えっ?」
送迎バスから降りてきた客が日本人用のデスクに歩いてきて、対応をしようと顔を上げた佳織の前に立っていたのは、さっき出て行った筈の裕也なのだった。
「そう、裕也だよ。真弓さん。あ、いや、佳織さん。」
「どうして? 飛行機には乗らなかったの?」
「ねえ、佳織さん。ボクと一緒に日本へ行ってはくれないかな。」
「どういう・・・事? それって・・・。」
「そう、そういう意味だよ。優香じゃなくて、君と一緒に日本に戻りたいんだ。」
唖然とする佳織に、裕也は自信満々で答えたのだった。
「待っていたわ、ジミー。」
「ホントニ、ヒコーキ。ノラナカッタノデスネ。」
「そうよ。言ったでしょ。私の選択が間違っていなかったって事を、もう一度貴方で確かめてみたかったの。」
「ワタシ、シュジン。アナタ、ドレイ。イイデスネ、ソレデ。」
「ええ、そうよ。どんどん私に恥ずかしい事、命令してっ。」
「ソレジャ、ソノテーブルノウエニ、ノリナサイッ。」
ジミーは上着を取りながら、優香に部屋の真ん中にある珈琲テーブルの上に乗るように命令する。
優香は命じられた通りにテーブルの上に裸足で上る。煌々と明るく照らされている室内は真っ暗闇の外からは丸見えなのに、テーブルの上にあがったことで自分の身体が更に外に晒されるのを意識する。しかしそうと知っていて命じられているのだと思うと、余計に身体が熱くなるのを感じるのだった。
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