ロッカールーム

妄想小説

体操女子アシスタントの試練


 九

 「お尻とか出てないですか?」
 由香里は少し腕を持ち上げてみて、吉村に訊いてみる。
 「ああ、大丈夫よ。ミニのワンピみたいに見えるから。」
 「そう・・・ですか。じゃ、お借りします。」
 由香里はそう言ってロッカールームを出るしかなかったのだ。本当は由香里が腕を少し持ち上げた時に、パーカーの裾がずりあがって、白めのレオタードの股間部分がパンティのように覗いたのだが、敢えてそれを教えない春江なのだった。
 (ふふふ。皆んなにその格好を晒すといいわ。)
 恥ずかしそうにパーカーの裾を抑えながら出ていく由香里を意地悪そうな目で見送った春江なのだった。自分のロッカ―の中に目を戻した春江は、奥に掛かっている春江がわざと貸さなかったスプリングコートをちらっと見る。

 地下にあるスタジオから東郷の居る部屋までは随分長くエレベータに乗らなければならない。由香里は誰も乗って来ませんようにと祈るような気持ちで庫内に入ったのだが、何故かその日に限ってエレベータは各駅停車状態で、殆ど全ての階で停まり、その度に男性社員が入れ替わりで入ってくるのだった。
 由香里は男性社員たちがエレベータ内に入る度に、由香里の露わな下半身を観て声には出さないものの(おおっ)と口を丸くするのに肩を竦めて隅にじっとしているしかなかった。
 「もしかして君、今度から体操のアシスタントをやる井川さん?」
 そう話しかけてくる男性社員まで居た。何故かもう既に局内じゅうに由香里の事が知れ渡っているみたいだった。しかし実はそれは、吉村春江に子分のように使われている君津亜紀が知り合いの男性社員に次々と電話して(今、エレベータに体操アシスタントの子が凄い格好で乗ってくるから)と教えまくっていたせいなのだが、由香里はまさかそんな事が裏で連絡されているとは思いもしないのだった。

あかね微笑

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