妄想小説
体操女子アシスタントの試練
十九
「次に床にお互い、脚を交互に重ねるようにして向き合って座ります。お互いの手と手を取り合って、片方ずつ背骨を伸ばしていきます。い~ち、に~。」
予めディレクターの西村に指示された通り、春江とあかねはそれぞれの脚を相手の股の間に伸ばしてお互い脚を挟み込むように床に座る。
「うっ・・・。」
春江が思わず声を顰めながら息を洩らす。
(こいつの踵が私の股ぐらを押し込んでくるのに、わたしの踵の方は届かないっ。」
一見、似たような背丈に見える二人だったが、明らかに脚の長さの違いが出てしまうのだ。春江は精一杯脚を伸ばそうとするが、どうしてもあかねの股間に踵も爪先も届かない。あかねの方は気づいているのかいないのか、涼しい顔をしている。
(く、くそぅ・・・。)
「はい。片側の人は腕を後ろに反りながら相手を引っ張ってぇ。それに合わせてもう一人は前に身体をそらしまぁす。」
あかねに腕を引っ張られると、春江はあかねの土ふまずの部分が股間を押し付けられる。逆になった時も、あかねを引っ張ろうとすると自分の股間ばかりがあかねの足におされて、自分の方は相手の股にまで届かないのだ。
「はい。いいでぇす。では立って、手足を振って身体をほぐしまぁすぅ。」
一見、何事もなかったかのように撮影は終わったのだった。
「ねえ、西村クン。今日のはいったい何なの。」
「え、吉村さん。どうかしましたか?」
「何とぼけてんのよ。あんな組体操、私に恥を掻かせたい為に仕組んだんでしょ。」
「え、何の事っすか? ボクぁ、プロデューサに言われた通りのプログラムを組んだだけっすけど。」
「東郷さんが・・・? 何よ。最近、プロデューサはやけに矢田って子ばかり引き立つような事をしてない?」
「さあ、考え過ぎじゃないっすか?」
しかし、春江の怒りはテスト映像を観返した時に頂点に達したのだ。
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