妄想小説
体操女子アシスタントの試練
四十九
股間のむず痒さに目を覚ました春江は、まず両手の自由が背中で奪われていることに気づく。眠り込んでいる間に、春江は両手の親指同士をあかねに仕掛けたのと同じ様に結束クリップで繋がれてしまっていたのだった。
(えっ、これどういう事?)
目覚めた春江は思いもかけない事態に狼狽する。あかねを陥れて辱める筈だったのが、自分が戒められて当直室の床に転がされているのだった。しかも股間には強烈な痒みが襲ってきていて、自分では掻き毟って痒みを慰めることも出来ないのだった。
そこへ現れたのは思いも掛けなかったあかねだった。
「あ、あかね・・・さん。」
あかねは無言で両手を縛られて床に転がされている春江の姿を見つめていた。
「ね、あかねさん。助けて欲しいの。私、縛られていて・・・。」
「え、縛られていて? それで?」
「うっ。あ、あの・・・。局所が痒いの。我慢出来ない位痒いの。でも掻く事も出来なくって。」
既に春江の額からはうっすらと汗が滲み出ていた。
「体操のプロって、少々何処かが痒いぐらいでも平気で耐えきれるって言ってなかったかしら。」
あかねは討論形式のインタビューの際に、吉村から嫌味で言われた言葉を思い返して繰り返してみせる。
「あ、あれは・・・。あの時は別よ。関係ないわ。」
「そうかしら。わたしは耐えてみせたわ。あなたに仕込まれたものにね。」
「な、何の事を言ってるの。し、知らないわ。」
「あのね、亜紀さんが全部喋っちゃったのよ。あなたと亜紀さんがした事をね。」
「えっ、・・・・。」
春江はもう二の句が継げなかった。
「そのまま朝まで悶えているといいわ。私がどんな風に堪えさせられたか身を持って知るのね。それじゃ。」
そう言うと、あかねは当直室の扉をしっかり閉め、外から施錠してしまうのだった。
「待って、あかねさん。赦してっ。わたしが悪かったわ。ごめんなさい。謝るから、ねえ。」
あかねは最後まで春江の声を聞き届けずにその場を去っていったのだった。
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