妄想小説
体操女子アシスタントの試練
二十八
あかねは意を決して、使用禁止になっている個室に飛び込む。中は古いトイレなので和式だった。スパッツはタンクトップと繋がっているワンピースタイプなので、先にTシャツを脱いで肩からタンクトップ部分を外してでないと、膝までおろすことが出来ない。考える余裕もなく、Tシャツを脱ぎ捨てると肩からタンクトップを外してスパッツを膝まで下し、和式便器にしゃがみ込む。
(間に合った・・・。)
間一髪だったが、しゃがみ込むと同時に小水が股間から迸りでる。
その頃、スタジオを飛び出たあかねを確認した春江は総務部でいろんな小間使いのような事をしている嘱託の老人、関根を呼び出していた。
「あ、関根さん。ちょっと大変なの。地下のフロアにあるシャワー室脇のトイレなんだけど水が出っ放しになっちゃって止まらないの。すぐ来てっ。」
そのトイレに貼紙をしたのも春江なのだった。更に春江が準備したのは貼紙だけではなく、水栓コックの方にもだった。
放尿を始めたあかねの小水はなかなか止まらなかった。撮影前にトイレに行った筈なのに、どうしてこんなに出るのか不思議だったが、身体中の水分が皆でてしまうのではと思うくらい、膀胱には小水が溜まっていた。やっと勢いが収まって、最後の滴が垂れたのを確認すると、ペーパーホルダからトイレットペーパーを巻き取り、股間に当てる。
(はあ・・・。間に合ってよかった。)
安堵の吐息をつくと、眼の前の水栓コックを下げる。しかし、プスッと空気が洩れる音がしただけで、水は一向に流れてこない。その時やっとあかねは、個室が故障中だと貼紙してあった事を思い出す。
(そうか。故障で水が流れないんだわ。えー、どうしよう・・・。)
便器の中には出したばかりの黄色い小水が溜まっている。水が出なければ流しようがないのだ。その時、トイレの外で扉を叩く音が聞こえてきた。
「誰か居るんですかあ。そのトイレは故障中ですよ。使えませんからすぐ出てきてくださあい。」
あかねはパニックに陥る。素っ裸の格好でしゃがんでいた事に気付き、慌ててタンクトップ式のスパッツを引き上げTシャツを被る。
「出てきてくださあい。故障中ですよぉ。」
相変わらずトイレの扉が叩き続けられている。絶体絶命のピンチだった。しかし出て行かない訳にはいかないのだった。
「ごめんなさい。故障してるの気づかなくて。」
殆ど言い訳にならない言い訳をしながら、顔を伏せたままトイレの個室を飛び出たあかねだった。入れ替わりで入ってきた初老の男に便器の中に溜まったものは、今あかねが出したばかりのものだと思われるのは間違いなかった。男に合せる顔がなく、俯いたまま男と擦違うと、廊下に走り出たのだった。
「あれえ、誰だ。今のは。あ、おしっこが溜まって流してないな。今の娘のかあ?」
そう言いながら水栓コックを捻るが水が出ない。
「あ、誰か元栓を締めてるな。誰だ、こんな悪戯をしたやつは。」
初老の男、関根はトイレの後ろ側にある小さな扉を開いて、締まっている元栓を開いて水が出るように戻すのだった。
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