妄想小説
体操女子アシスタントの試練
二十九
「トイレから戻ってきたあかねの顔、見た?」
「ええ。すっかり意気消沈って感じでしたね。」
「そりゃ、そうよ。出したばかりのオシッコを初老の男に見られたんだからね。普通の神経じゃ居られないわよ。」
「えーっ? どうやったんですか。」
「トイレの水栓コックの元栓を閉じただけよ。そうやっておいて、総務の関根っていうオヤジにトイレの水が出っ放しになってるって電話したのよ。慌てて飛んできた筈だわ。」
「そしたら水が流れないんで、オシッコが流せないでいるあかねの所に飛び込んでいったって訳ね。凄いわ。悪知恵が働くのね、吉村さんて。」
「まだこれで終わりって訳じゃないわ。徹底的にやらなくちゃ。今度はこれよ。」
そう言って春江が取り出したのはチューブに入った軟膏のようなものだった。
「何ですか、それ?」
「ふふふ。まあ、媚薬みたいなものね。ずいきっていう植物から抽出したエキスを練り込んであるの。乾いていると何でもないんだけど、水分があると吸着してエキスが沁み出すの。これ、粘膜に付くと、とっても痒くなるのよ。」
「へえ。よくそんなもの、知ってますね。え、まさか・・・。それを誰かのものに塗り込んでおくっていう事?」
「当たりぃ。レオタードの内側に塗って暫くおくと乾いちゃって判らなくなるの。でも、汗とか掻いちゃうと水分を吸って・・・。ね。」
「うわっ。いやだ。」
「あそこを剃ってあると毛穴とかに入り込みやすいの。あとはちょっと工夫して汗を掻いて貰うだけ。」
「怖-っ。」
あまりの春江の悪知恵に、亜紀も舌を巻くのだった。
「ねえ、あかねさん。今日もストレッチ、付き合ってくれる?」
「ええ、勿論ですとも。わたしにもウォーミングアップにちょうどいいですから。」
「そう? じゃ、今日はあっちの部屋でいいかしら。ADの子に部屋温めておいて貰ったのよ。私、少し体重が増え気味なのでホットヨガみたいにして少し体重落そうって思ってて。」
「へえ、吉村さん。ホットヨガとかもやるんですか。」
「まあ、真似事だけね。でも体重は確実に落ちるわよ。」
「あら、じゃあ私も頑張ろうっと。」
春江が案内する部屋に入るとムッとする。
「少し暑いかしら?」
「いえ、大丈夫ですよ。本番までもうそんなに時間はないから。少しぐらいなら・・・。」
本当はちょっと息苦しいほど暑かったのだが、あかねは先輩に気兼ねしたのだった。
「じゃあ、そこに先に床に付いて。私が後ろから押すから。」
「あ、いいんですか? じゃ、お願いします。」
春江はあかねが申し訳なくなるほど、念入りにあかねの身体を屈伸させる。その目的があかねに汗を掻かせることなどとは思いもしないで、暑すぎるくらいの部屋の中であかねは精を出したのだった。
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