昏睡貞操帯

妄想小説

体操女子アシスタントの試練


 四十六

 (何? 何なの・・・、これは。)
 帯というよりT字帯と言った方が正確だ。腰にきつく巻かれているだけでなくその帯とは直角に股座を通して別の帯が嵌っていて、前の部分に真鍮の小さな錠前が掛かっているのだ。
 外そうとして無理やり左右にゆすってみるが、ガチャガチャ音がするだけでびくともしない。錠前の鍵を外さない限り外れない構造になっているらしかった。
 慌てて重い腰のまま立上る。股を潜る帯が邪魔で脚を少し開いていないと立つことも難しい。
 「ど、どうしてこんなものを嵌められているの・・・?」
 腕時計をみるともう明け方近くだった。ゆうべから服を着たままこの格好でここに寝ていたらしいと気づく。しかし自分からここへ来た記憶は定かでないのだ。
 (そうだ。宿直室の隣のシャワーを使おうとしたんだ。何でシャワー室なんか使おうとしたんだっけ・・・。)
 頭の中が朦朧としていてよく思い出せない。
 部屋を出て隣のシャワー室の扉を開いてみて、はっと気づく。鏡の前にT字型の使い捨て剃刀が無造作に置かれている。
 『亜紀ちゃん。ちょっと。』
 最若手のカメラマン、足立に呼び止められて耳打ちされたのだった。
 『さっきの撮影の時、レオタードから陰毛がはみ出ていたよ。むだ毛はちゃんと処理しとかなくちゃ。』
 そう注意されて慌てて剃刀を持ってシャワー室に来たのだった。そこまでやっと思い出したもののその先が全く覚えがない。
 (おかしいわ。確かにシャワー室に来たのは間違いないのだけれど・・・。)
 亜紀は頭を抱えて思い出そうとしているうちに尿意が募ってきているのに気づいた。シャワー室の直ぐ隣に古いが和式のトイレがあるのを思い出した。
 (そうだ。このトイレを使って、あかねを陥れて・・・。)
 その時、事態に漸く気づいたのだった。この貞操帯のような鉄の帯を嵌められたそのままの格好では用を足すことが出来ないということに。

 亜紀は泣きそうなほど惨めな気持でアシスタント控え室に戻ってきた。さきほどトイレで大きく股を開いて、股間の貞操帯を端に寄せてなんとか出そうと試みたのだが鉄製の貞操帯は柔軟性がなく端に寄せることも出来ない。そうこうするうちに我慢の限界が来て洩れ始めるともう自分ではどうにも出来なかった。貞操帯の中に穿いたままのショーツも脱ぐことが出来ずに洩らしてしまった為に、貞操帯の内側でショーツはぐっしょりと小水まみれになってぽたぽた雫が垂れていた。仕方なくショーツは当直室の戸棚にあったナイフで引き千切って剥ぎ取ったのだった。ハンカチを濡らしてなんとか貞操帯の内側を拭ったもののすぐには乾かず気持ち悪い思いをしながら控え室に戻ってきたのだった。
 (そうだわ。あかねに違いない。あかねに気づかれて仕返しをされたのだ。そうに違いない。)
 そう考えたものの、だからどうするという手立ても思いつかない。
 (とにかく、あかねに逢って何とかして貰わなくては・・・。)
 そう思い詰める亜紀だった。

あかね微笑

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