リフト手つなぎ

妄想小説

体操女子アシスタントの試練


 五十一

 リフトというのは元々バレエやフィギュアスケートのペアという形態の演技で用いられる男女がペアになって演じられる技だ。通常は掌同士を繋いで持ち上げたり、片手と太腿や腰の二点で支えて持ち上げるのが普通だ。それは人間の身体の重心が股間より高いところにあるせいで、臍の下辺りになる。しかしその部分で身体を支えようとすると俯せ状態でしか保てない。女性の脚の付け根である股間部分で、それも片手で持ち上げるのは重心より低い位置で支える事になる為、うまくゆかない。それに女性器である股間に人前で男性が手をずっと触れているというポーズは倫理上も難しい禁断のポーズなのだ。それこそが究極のリフトと呼ばれる所以なのだ。股間で身体を支えるのは男女の関係にあっても絶対的な信頼関係がなくてはならない。しかし完成すれば男女の究極の接合の形を意味することになるのだ。

ビールマンスピン

 「ここにビールマンスピンという難しいフィギュアスケートの技の写真がある。分るかね?」
 「はい、見た事があります。最近はこれに挑戦する人が増えてますが、ちょっと前までは世界中でも出来る人が独りかふたりぐらいしか居なかったと聞いています。」
 「デニス・ビールマンがこの技を完成させた時は世界中で彼女一人しか出来ない技と呼ばれていたんだ。動画で回転している様子を観察するとよく分るんだが、身体の回転の中心が脚の付け根、つまり股間の一点に集中しているんだ。フィギュアスケートの場合、スケート靴を履いているからその分、脚が長くなっているのと同じだ。だから脚の付け根に重心を持ってき易くなっている。裸足でここに重心を持ってくるのは、元々脚が相当長くて、上半身を柔軟に後ろに反らすことが出来る人間に限られる。誰にでも出来る技ではないのだ。」
 あかねは岡村美香が(わたしは貴方みたいに脚が長くないから)と嘆くように言っていたのを思い出した。
 「もう少し練習させてください、東郷さん。」
 あかねは東郷に自分の性器部分を触られていることに嫌悪感を持っていなかった。むしろずっと触り続けて欲しい、手を離さないで欲しいぐらいなのだった。しかしあからさまにそれを要求するのは憚られたのだった。

あかね微笑

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