妄想小説
体操女子アシスタントの試練
四十一
「体操って、皆で息を合わせるのも難しいのよね。ねえ、吉村さん。」
何とか話題を逸らそうとする由香里だった。
針の筵のような対談形式の収録がようやく終わって、いち早く立上った由香里は担当ディレクターに呼び止められる。
「ごくろうさんでした。ちょっと・・・。」
そう言って、由香里だけ収録の行われた応接室の隅に呼び込まれる。
「何か、あの・・・。」
「ふふふ。いや、君って普段あんまりミニスカートは穿き慣れていないようだね。パンツがチラチラ見えちゃってたよ。あ、大丈夫。そこはこっちでうまく編集しておくから。」
由香里はディレクターの言葉に絶句して何も答えられずに立ち尽くす。
(違うのよ。わざとあんな格好をさせられたの。わたしからじゃないのよ。)
そう訴えたい由香里だったが、そんな言葉は発することは出来なかった。ディレクターはうまく編集と言っていたが、それは放映用はカットするという意味だけではなく、裏のビデオとしてディレクターズカットにはたっぷり採用させて貰うという意味を暗に含んでいることなど、由香里には知る由もないのだった。

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