妄想小説
体操女子アシスタントの試練
三十一
「はあい。それでは今日の収録はこれで終わりになりますぅ。ご苦労さまでしたあ。」
ディレクターの終了の声が掛かった後も、春江はすぐにはあかねの両手を自由にしなかった。
「吉村さん。吉村さんってば。」
「え、何?」
「もう手を放してっ。」
「手? あら、ああいけない。忘れてた。貴方の手を握ってると気持ちよくて、何かとても安心するものだから。」
そう言いながら漸くあかねの手を自由にしてやった春江だった。あかねはすぐさま両手を下腹部の前で組んでお腹に押し付けるようにしながら痒みを癒そうとする。しかし、抑えているだけでは痒みは収まりそうもないので、バスタオルをすぐに腰の前に当ててその裏でこっそり股間を掻き毟る。
さっとシャワールームへ急ごうとするあかねだったが、春江の方が先を制す。
「あかねさん。先にシャワー使っていいかしら。わたし、何だかすごく汗を掻いちゃったみたいで。」
すぐにあかねにシャワーを使わせない作戦だった。先に言われてしまって、駄目とは言えないあかねだった。
「ええ、お先にどうぞ。」
そう言いながら着替えるのもそこそこにトイレに行って個室の中で股間の痒みを宥めようとするあかねなのだった。
「ねえ、亜紀さん。実はわたし、昨日の収録の時にデリケート・ゾーンが痒くてしかたなかったの。そんな事って貴方、経験ない?」
「え、デリケート・ゾーンってあそこの事? いやだあ。私はそんな事、あんまりないわ。」
「そう・・・。どうしたのかしら。昨日、急にだったので。」
「それって、毛じらみじゃないの?」
「え、毛じらみ? でも、私、貴方に注意されてあそこの毛は全部剃っちゃってたのよ。」
「あ、そうだったわね。つるつるじゃ、毛じらみも潜みようがないか。あ、でもあそこ、剃ったばかりって肌が慣れてないでしょ。だから痒くなる事ってあるらしいわよ。特に、剃った後、毛が生え始めようとする頃。肌が慣れるまでは毎日、丁寧につるつるになるまで剃った方がいいわ。ちょっと伸びてくるとチクチクもするし、早くつるつるの肌にして慣らすほうがいいわ。」
「そうなの。じゃ、そうするわ。ありがとう。ごめん。じゃ、早速シャワー室で剃り直して来るわ。じゃ、本番前に戻ってくるから。」
「あ、行ってらっしゃい。」
シャワー室へ向かうというあかねを見送った後、亜紀は吉村の方へすり寄って行くのだった。
「あの子、昨日は大分痒かったみたいよ。でも、騙され易い性格みたいね。毎日剃り直した方がいいって言ったら、早速剃って来るって。」
「ばか正直っていうのよ、ああいうの。あいつ、毎日のようにプロデューサに呼ばれて個別指導を受けているみたいね。今日も収録の後、呼ばれてるらしいし。」
「へえ、そうなんだ。私なんか最初の頃、一二度しか呼ばれたこと無いわ。」
「あいつ、プロデューサに気にいられてるっていうんでいい気になってるみたいね。もっと懲らしめてやらなくちゃ。」
「え、まだやるの?」
「そうよ。駄目押しをするの。もっと酷い目にね。ふふふ。」
春江は既に計画している新しい悪企みに、ひとりで悦にいっているのだった。
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