妄想小説
体操女子アシスタントの試練
十六
「今度は目を閉じたままでバランスを取るんだ。まずY字から。」
最初、片足を上げて手で掴むと体が大きく振れる。暫く堪えているうちに段々要領が掴めてくる。身体の振れがなくなると、ゆっくりと手で掴んだ脚を持ち上げていく。
「そう。そうだ。そのまま今度はI字に持っていって。・・・。そう。そのままじっと保っていて。」
そう言うと、東郷はあかねの方に近づいてきて、肩に手を置く。身体を支えられてあかねのI字の身体が安定する。
「自分の身体の中心線を頭に思い描いてっ。」
そう言うと、肩に置いた手をゆっくりとあかねの体側に沿って下げていく。脇の下から、体側のくびれ部、腰骨と支えている場所が重心の上側から下側に向かうにつれて、あかねは自力でバランスを維持しなければならなくなる。
「しっかり身体の中心を認識するんだ。」
腰骨から腿の上側、太腿の尻の下まで達した東郷の手は横から腿の背中側を伝って内側へと移動してくる。大きく開かれた股のすぐ下まで達した東郷の手は、ゆっくりとその内股を這い上ってくる。あかねは思わず気づかれないように喉の奥で生唾を呑み込む。
「ここが身体の中心だ。しっかり認識して体幹を真っ直ぐに保つんだ。」
東郷の指が頼りなげな股布に包まれた陰唇の下部をそっと抑えている。
「頭の中心から身体の中心点へ重心をずらさないように保って・・・。そう、そうだ。」
あかねは自分の身体の中心部がかあっと熱くなるのを感じていた。その火照りが東郷の指に伝わっているのかと思うと、余計に身体が熱してくるのを止めきれない。
「ようし。いいだろう。脚を下してっ・・・。」
あかねは、ふうっと息を深く吐きながら脚を床に下す。
「君は体操の時も時々身体の芯がずれることがある。こうやって時々I字バランスで身体の中心を確認するといい。」
あかねは東郷が解いてくれるまで目隠しをしたまま、待っていた。東郷が目隠しを解きにかかると、何だか惜しいような気持ちになるのだった。
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