がに股磔

妄想小説

体操女子アシスタントの試練


 三十三

 「何なの。こんな格好にして、どうしよって言うの?」
 見えない相手に向かってあかねは訴えてみる。しかし返事はない。代りにあかねの鼻が突然ぎゅっと抓まれてしまう。息が苦しくなってあかねは口で息をせざるを得ない。そこへ何やらチューブのようなものを差し込まれてしまう。その上で唇を二枚のガムテーブで吐き出せないように塞がれてしまう。
 「うぷっ。うぐ、うぐうぐうぐ・・・。」
 声も出せなくなって必死に抗議しようとするが虚しく呻き声が洩れるだけだった。それだけではなく、チューブを通して何か液体があかねの口の中に注ぎ込まれだした。逃げ場のない水分は呑み込まざるを得ない。
 「ううっ、うう、うう・・・。うぷっ。」
 たっぷり1リットルほどの水分を呑み込まされてから漸くガムテープが剥される。
 「ぷはっ。な、何を・・・、何を呑ませたの?」
 しかしこれにも返事は無い。代りに今度は何か布袋のようなものが頭全体に被せられる。それがあかねの顔を覆ってしまうと袋の中に手が突っ込まれて目隠しが外されたらしかった。しかし頭全体が分厚い袋で覆われているので、以前として視界は戻ってこない。
 しばらくごそごそという物音がしていたが、やがてしいんと辺りが静まり返る。不安な面持ちの中でじっと待っていると、顔を覆っていた布袋が徐々に上へずり上がっていったのだった。何かで上へ引っ張られているらしいのだが、あかねにはどうなっているのかさっぱり分からない。布袋の口が鼻の近くまで引き上げられた所であかねの目に光が入ってくるのが判る。そして遂に袋の下端が目の上まで引き上げられたところで、あかねは自分の置かれた状況をやっと把握するに至ったのだった。
 あかねは後ろ手に何かで括られていて脚をがに股に開いた格好でぶらさがり健康器に繋がれていた。いや、繋がれているのは脚の膝部分だけで、首が上下に牽かれた縄で立つこともしゃがむことも出来ないように吊られて固定されているのだった。その格好があかねに分かるのは、目の前に大きな姿見が置かれているからだ。置かれているのは姿見だけではなく、三脚の上に設置された小さなビデオカメラもだった。そしてそのビデオカメラのレンズの横に赤いランプが点っているのは、それが録画中であることを示すものに他ならないのだった。
 (嫌っ。こんな格好をさせといて、録画するなんて・・・。)
 あかねはその状況から逃れようと身動きしてみようとするが、首は上下に固定され、両膝はぶらさがり健康器のパイプに繋がれている為に姿勢を変えることすら出来ない。手の指は動くのだが、親指同士がなにかできっちりと繋ぎ留められているらしく、背中から両手を動かすことも出来ない。
 (どうして、こんな事に・・・。)
 あかねは必死で冷静になろうと努める。自分の置かれている状況を把握しようと努める。
 目の前の姿見に映る姿は白いレオタードしか羽織っていない。
 (レオタード? そうだ。自分は東郷プロデューサのところでレッスンを受けて戻ったきたのだった。このぶらさがり健康器のようなものは控え室の隅にあった懸垂運動用のものの筈・・・。自分はまだ控え室に居るのだ。)
 顔を上向かせて頭上を見上げると、先程まで自分の頭をすっぽりと覆っていたらしい袋が縄のようなもので上から吊られている。目の前の姿見にはその下端が辛うじて映っているのが見える。その袋を吊っている縄の先が何処に繋がっているのかは鏡には映っていないのでわからない。
 その時、あかねは身体の中に少し前に経験した感触が戻ってくるのを感じた。それが何であるのかに気づいた時、あかねは自分がこんな格好で繋がれている理由を悟ったのだった。
 (変だわ。急におしっこがしたくなってきた。あの時と同じだわ。ま、まさか・・・。)
 あかねは不自由な格好で脚を開かされたままビデオカメラの前に立たされていることの本当の理由を知った。誰かが自分が粗相する様を撮影しようとしているのだ。
 (い、嫌っ。そんな事・・・。)
 しかし次第にどんどん強くなる尿意に、何時までも堪え切れる筈がないことをあかねは思い知るのだった。脚をがに股に開かされていくので、股間に力を篭めることが出来ない。限界が来ればそのまま洩らしてしまうのは間違いなかった。そう思うだけで、尿意の強まりの速さがどんどん増しているような気がしてくるのだった。
 (ああ、もう駄目っ・・・。)

あかね微笑

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