妄想小説
体操女子アシスタントの試練
三十七
クッション材らしきものに包まれた小包になった紙包みがあかねの元に届けられたのはそれからすぐの事だった。この時もディレクターの西村を経由して届けられたのだった。
「あかねちゃん。よく来るね。ファンからかい? あれっ? もしかしてラブレター・・・とか?」
茶化すように笑いながら紙包みを手渡す西村に、愛想笑いで誤魔化したあかねだったが、受け取る手は震えていた。
すぐさま女子トイレの個室に飛び込んだあかねはおそるおそる紙包みを開封してみる。中から出て来たのはクッション材に包まれた何かと一枚の紙切れだった。
『画像を入手した。拡散されたくなかったら今度の撮影時にそれを膣内に挿入しておくこと。』
たったそれだけのメッセージが記されているだけだった。クッション材を開くと中から出て来たのはピンクローターという名前のバイブなのだった。
あかねは大学生の頃、それを同じ体操部の女子が見せてくれたことがあって何であるのかを知っていた。
「彼ったら、こんなの私に使わせようとするの。どう思う?」
その時、ピンク色の卵のような形をした物体に電線で繋がっているリモコンを操作するとブルブルと振動を始め、性的な快感を女性器に与えるものであるのを知ったのだった。
その時の事を思い出しながら送られたピンクロータをしげしげと眺めてみる。同じ様に本体から電線のようなものが伸びてはいるものの、リモコンのようなものは付属はしていなかった。しかし本体そのものは昔見せて貰った女性用のバイブそのものに間違いなかった。
あかねは本番直前まで迷っていた。
(そんなものは誰かの悪戯に過ぎないのだ。そんな事に従うなんて馬鹿げている。)
そう思おうと何度も務めた。しかし手紙に記されていた『拡散』という言葉が、自分には経験が無いだけに怖ろしかった。自分にそんな悪戯を仕掛けた犯人が、もしその『拡散』なることを実行したら、いったいどんな事態になってしまうのかを考えるだけで怖かった。
「そろそろ本番に入りますのでスタンバイをお願いしますぅ。」
アシスタントディレクターが出演者たちに声を掛けて廻る。その声を聞いて、あかねはすくっと立上り、傍らにいた君津亜紀に声を掛ける。
「私、ちょっとおトイレに行ってきます。」
バイブを忍ばせておいた小さなポシェットを手にあかねは女子トイレに急ぐ。
個室の扉の錠を何とも確かめてから、この日のコスチュームの薄い色のレオタードを肩から外して膝の部分まで下げる。深く息を吐いて心を鎮めてからゆっくりとそのモノを自分の剃りあげている割れ目に押し込む。
(うっ・・・。)
得も言われぬ異物感にあかねは顔を顰める。しかし思ったよりそれはすんなりと奥に滑り込んでいった。本体から伸びる電線は目立たないように鼠蹊部から後ろに回して尻の割れ目を添わせるようにする。お尻に何かを挟むのは気持ち悪かったがレオタードから線が透けて見えるのを防ぐにはそれしかなかった。再びレオタードを肩まで通してあかねはスタジオに急ぐのだった。
「はいっ、胸を大きく反らしてぇっ。」
最年長の指導員、青木の声に合せてあかねたち三人のアシスタント出演者は腕を振る。股間の異物感にやっと少し慣れてきた頃だった。
「両手を腰に当てて、大きく身体を後ろに反らしてぇっ。」
あかねたちが股間を突き出すような格好で、上体反らしを始めたその瞬間だった。
ブブブブッ・・・。
突然、あかねの陰唇内に埋め込まれたものが振動を始めたのだった。
(うっ・・・。)
あかねは身体を反らしたまま、蒼くなりながらじっと耐える。身体を元に戻したあかねの表情はこわばっている。それをカメラが大写しにアップで捉えたことにあかねは気づいていない。
一旦停まったと思ったバイブは、指導員の声に合せて再び身体を反らし始めた時にまた振動を始めたのだった。
(いやっ、こんなの・・・。)
あかねの声にならない訴えはしかし、誰の耳にも届かない。
「身体を斜め前に倒してぇっ。」
左右の屈伸運動になり、あかねは上体を今度は前に倒す。そして身体を元に持ち上げると、それに合せたかのようにバイブは小刻みに震えるのだった。あかねは堪えているのが表情に出ないように口角を挙げて微笑を作ろうとするのだが、心の中ではもう泣きそうだった。
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