クレーン撮影

妄想小説

体操女子アシスタントの試練


 四十五

 スタジオ入りした時あかねは隅に東郷が立っているのに気づいたが、わざと知らぬ振りをした。収録が始まると、もう自分の演技に集中する。しかし、その集中を邪魔してくるのが時折動き出す体内のあの異物だった。あかねは東郷に指示された通り、それが動き出すと顔をしかめて素直に表情に出した。しかし不思議とディレクターからカットの声は掛からない。あかねは事前に東郷がディレクターの西村に言い含めてあったことを知らなかったのだ。

 収録が終わりに近づいた頃、プロデューサの東郷はクレーンカメラの操作をしていた若い足立カメラマンに近づく。
 「足立、よくやった。ばっちりだ。おかげで不正電波の発信源を突き止めることが出来たよ。」
 「そうなんですか、東郷さん。何だか二人のアシスタントの近くに寄るとハウリング音が急に大きくなった気がしたんですが・・・。」
 「その事なんだが、後は私が全て措置を講じるので今日の事についてはもう忘れてくれ。他言も無用だよ。」
 「わかりました。東郷さんがそう仰るのならその通りにしますよ。」
 思った通りの結果に東郷も満足気だった。

 目を覚ました時、亜紀は自分が何処に居るのかさっぱり分からなかった。見覚えのない部屋だと思ったが、だんだん頭がはっきりしてくるとそこは局の当直室だということが判ってきた。
 (何で私がこんなところに寝ているのだろう・・・?)
 上に掛けてあった毛布を跳ね除け、身体を起そうとして妙に腰回りが重たいことに気づく。何気なく腰に手を当ててみて、硬く冷たい感触にどきっとする。私服のスカートのままだったが、それを捲り上げてみて、自分の股間にショーツの上から鈍く光る鉄製の帯が巻かれていることを知るのだった。

あかね微笑

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