上体反らし

妄想小説

体操女子アシスタントの試練


 三十二

 計画はその日早速実行されたのだった。あかねの東郷プロデューサによる個別指導は回を追う毎に念入りにされ、時間も延びていった。その日の指導も終わったのは、他の出演者たちやスタッフなどが皆帰ってしまった夕暮れ時になっていた。一人で誰も居なくなったがらんとした控え室に戻ってきたあかねは、喉の渇きを覚えて自分のロッカ―からスポーツドリンクのボトルを出し、喉を潤すのだった。

 変な姿勢で長く居たせいで、あかねは身体のあちこちに痛みを憶えて目を覚ました。
 (あれ、寝ちゃったのかしら・・・。)
 身体を動かそうとして、あちこちに自由が効かないのに気づく。両手が背中で固定されているらしく前に持ってくることが出来ないのだ。脚を曲げて身体の姿勢を直そうとして、足首にも何かが巻き付いているようで自由が効かない。なによりも事態を把握しようとしたが眼も何かで塞がれているようで何も見えないのだ。だんだん事態が呑み込めてきて、自分が両手、両足を何かで縛られ、目隠しをされた上で床に転がされていたことに気づく。
 (何なの、これは・・・。どういう事なの?)
 あかねにも何が何だかさっぱりわからない。頭がぼんやりして記憶も定まらない。
 (えーっと、どうしてたんだっけ・・・。確か、東郷プロデューサにレッスンを受けていて・・・。)
 そこから先の記憶がはっきりしないのだった。その時、ギィーッと鈍い音がした。近くでドアが開かれたようだった。誰かが近づいてくる気配がした。
 「誰っ・・・。誰か、居るの?」
 恐怖にかられてあかねは声を出す。しかし相手は沈黙を守ったままだ。危険を感じたが、どうやったら身を守れるのかも判らない。もう一度足を窄めて立ち上がろうとしてみたが、やはり足首が何かに繋がれているようで、少し動かせただけでそこからはピンと何かが張っているようでそれ以上は動かせないのだ。
 突然、あかねは首に縄のようなものが巻かれたのを感じた。
 「嫌っ。何するの・・・。」
 逃げようと試みるが首が締まるだけだった。それからあかねは肩を強く掴まれたようで、無理やり身体を起される。足首が繋がれているほうへ少し押されたらしく少しだけ足の動きが自由になった。と思った次の瞬間には首に巻かれたものが上に引っ張り上げられたのだった。
 「い、嫌っ。待って。く、首が…首が締まってしまうわ。」
 首に巻かれたものが締まってくるので、堪らず何も見えないままあかねはしゃがんでいた格好から立ち上がらされる。
 キュル、キュルと滑車が廻るような音がしたと思ったら、あかねの首に巻かれたものが更に上に引かれる。首が苦しくて上向きになって何とか堪えるしかなかった。
 (これ以上牽かれたら首吊りになってしまうわ。)
 何も見えない恐怖があかねを襲う。
 次には何かがあかねの脛の上、膝の関節辺りに巻かれるのを感じた。それが引っ張られて何かに固定されようとしている。もう片方の膝にも同じものが巻かれたようで、引っ張られることであかねは脚を大きく広げざるを得ない。首に余裕がないので息が苦しくなる。あかねがばたばたもがくように苦しんでいると首の縄が少し緩んで来た。と思ったら、今度は背中の方で下向きに牽かれ始めたのだ。首には上下に二本の縄が括り付けられているらしかった。上から吊っている縄が緩む代わりに下から引っ張る縄が引かれるので腰を落とさざるを得ない。それも下に自由に身体を低く出来る訳ではなく、上から吊っている縄の余裕分しか腰を落とせないのだ。両膝が何かに括られている為に、あかねはおおきくがに股に脚を開いて腰を落とすという格好を強いられるのだった。しゃがむでもなく、立つことも出来ない中途半端な高さで上下の縄は固定されてしまったようだった。

あかね微笑

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