妄想小説
体操女子アシスタントの試練
五十二
吉村を欠いた状態での収録が次の日行われた後、あかねは西村ディレクターに呼ばれる。
「あかね君。君、この後時間が取れるかな?」
「あ、はい。何でしょうか。」
「実は、この後新しいコスチュームの検討会で使うプロモーションビデオの撮影を予定していてね。プロデューサから君にモデルになって貰うようにとの直々の推薦なんだ。」
「プロデューサが仰るのなら何でもそれに従います。」
「あ、そう。じゃ、1時間後にこのスタジオで。」
「分りました。」
あかねはプロデューサが自分を指名してくれたことが晴れがましくもあり嬉しかった。
指定された一時間後にあかねがスタジオに入ると、既に固定カメラが5台用意されていて、移動カメラは足立カメラマンが操作するクレーンカメラ一台だけだった。撮影スタッフは西村ディレクターと足立カメラマンだけという普段よりぐっと少ない人数で、人払いがされている印象だった。撮影される側もあかね只一人らしかった。
「演技するのは私一人だけですか?」
「ああ、そうだ。一般の放映用じゃないんで、製作費用は極力削減する必要があるのでね。」
「そうですか。」
「あ、これが衣装。何通りかあるので順番に着替えてくれるかな。」
「分りました。」
あかねは渡された衣装ケースに入ったものを持ってアシスタント控え室の着替えコーナーへ向かう。
「え、これっ?」
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