留守番 完結編
二十五
男の姿が見えなくなって、美鈴にやぶ蚊の羽音が聞こえてきたのはすぐだった。明るい日差しの中で姿ははっきり見えないのだが、右に左に聞こえる羽音は一匹や二匹ではなかった。姿が見えなかったのが自分の白い肌に留まるやその黒い姿がはっきり認められる。しかもやぶ蚊は男が塗りたくった自分の小水の匂いに惹かれてくるらしく、乳首の周りや剥き出しの陰唇にばかり狙いをつけているようだった。
(嫌っ。来ないでっ・・・。)
しかし両手、両足の自由を奪われて白い肌を剥き出しにしている今の美鈴はまさしくやぶ蚊たちの餌食そのものなのだった。
蚊に血を吸われた後は強烈な掻痒感が美鈴を襲う。ぷっくり膨れて腫れあがったその部分を掻き毟りたくて堪らないのに、文字通り手も足も出せないのだ。美鈴は腰を振りながら身をよじるようにして痒みに堪えていた。
「大分、辛そうだな。」
突然の男の声に美鈴ははっとなる。猛烈な痒みに頭がおかしくなりそうで、目を瞑って堪えていたせいで、男が近づいてきていたのに気づかなかったのだ。
「ああ、痒い。痒いの。お願い、助けてっ・・・。」
「ふふふ。だいぶ刺されたようだな。ほう、結構腫れてるじゃないか。」
「ああ、何とかしてぇ・・・。」
男は突然、美鈴の乳房を両手で鷲掴みにする。そしてそのままぐりぐりと力を篭めて回転させるようにして両方の乳房を同時に掻き毟る。
「ああ、いいっ。いいわっ・・・。ああ、もっとしてぇ。」
男の手が自分の乳房を蹂躙しているというのに、痒い部分が癒されることだけしか感じることが出来ない美鈴だった。
「お願いっ。あそこも・・・。あそこも、してっ。」
「ふうん? あそこだって? どこだい、それは?」
「ああ、いじわるっ。おまたよ。おまたのところ・・・。」
自分では手が出せないもどかしさに、美鈴は必死になる。
「おまたって、何処だい? そんな上品ぶった言い方じゃわからないなあ。」
「ああ、いじわる。おまんこ・・・。おまんこよっ。痒いのっ。お願い、掻いてっ。」
しかし、男は泣き叫ぶような美鈴の懇願を無視して十字架に括り付けた縄を解き始める。片方の手が外されるや、美鈴は股間に手をやって、激しく掻き毟る。しかし、もう片方の手が十字架の磔から外されるや、男は美鈴の腕を背中に捩じ上げ、もう片方の手首も掴んで後ろ手に手錠を掛けてしまうのだった。
「ああ、そんな・・・。まだ、痒いの。掻かせて欲しいのっ。」
「それはもう少しおあずけだな。屋敷に戻るまで我慢するんだ。」
「ああ、そんな・・・。」
美鈴は、男が首輪の鎖を持って屋敷の方へ牽き始める前に、自分から屋敷の方へ急ごうとしていた。今度は逆に男が鎖で美鈴を制するような格好になる。
「どうしたぃ。そんなに屋敷に急ぎたいのか?」
「うっ。も・・・、洩れそうなの。お、おしっこが・・・。ああ、駄目っ。」
突然、美鈴は屋敷の方へ戻る道の途中で地面にしゃがみ込む。
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