留守番 完結編 第二部



バイブの癒し

 三十九

 男が裏庭の恵子の方に近寄ってくると、恵子は泣きそうな顔で男を観る。頭がおかしくなりそうなほど、やぶ蚊に刺されまくった股間が痒くて堪らないのだ。男がさっと手で払うと、最後の一匹がぶ~んと飛び立っていく。近くにいたやぶ蚊はもう殆どが血を吸いまくって飛んでいった後なのだった。
 男はまず手拭の猿轡を外してやる。恵子は乾ききった口の中で思いっ切り唾を呑みこんでから男に叫ぶ。
 「痒いのっ。堪らないわ。何とかしてっ。」
 磔にされて自由にならない身体のまま、腰を一生懸命振って何とか痒みを癒そうとする恵子だが、痒いところにはどうにも手が届かないのだった。
 「今、癒してやるよ。」
 男はそう言うと、持ってきたバイブのスイッチを入れて恵子の剥き出しの股間に深々と挿し込む。
 「ああ、いいっ。いいわっ。堪らないっ・・・。」
 痒みが癒されていく陶酔感に浸っている恵子を前に、男はバイブが抜けないように縄でしっかりと腰に紐で固定してから恵子を磔状態から降ろすのだった。

 二階のアトリウムの窓から様子をずっと見守っていた薫は、恵子が股間にバイブを挿し込まれた後、磔から降ろされ両手を後ろ手に縛られて屋敷の方に連れて来られたのを知った。
 やがて男は繋がれた薫と美鈴の方へ戻ってきた。
 「恵子ちゃんをどうしたの? 何処に居るの?」
 男の顔を見るなり、薫は叫ぶように声を挙げる。
 「ふふふ。心配するな。下のホールに繋いである。バイブの振動で気持ちよさそうにしているぜ。あれは効くからな。お前もそうだったろ?」
 男はまだ猿轡をされたままの美鈴に向かってそう訊ねる。
 「あなたもそんな事、されたのね?」
 そう薫に言われても、美鈴はうなずくても首を振るでもない。
 「さ、お前も先に下に連れていってやろう。」
 美鈴を繋いでいる鎖を扉の取っ手から外すと、男は美鈴を牽いて階下のほうへ降りていってしまう。
 独り残された薫は辺りを見回して、何とか出来ないかと思案するのだが、窓の手摺りに手錠で繋がれている以上、手の届く範囲には役に立ちそうなものは何もないのだった。

美鈴

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