留守番 完結編 第二部



地下室監禁

 五十二

 恵子の目に入ってきたのは、男に一本鞭で裸の尻を打たれ続ける哀れな先生の姿だった。
 後ろから美鈴が(急ごう)とばかりに恵子の袖を引っ張る。美鈴はそっと音を立てないように再び木の蓋に栓をすると、抜道の先を急ぐのだった。

秘密の通路

 地下道は裏庭の方に向かってずっと続いていた。時々天井に明り取りの窓があるので、そこに地上からの明りが差し込んでいるようだった。遠い先に石の階段が見える。美鈴たち二人がその石の階段を駆け上がると、屋敷の裏庭にある古ぼけた祠の跡のような所に出た。すぐ傍に美鈴も、そして恵子までもが磔にされた木の十字架が立っている。
 (あそこだったんだ・・・。)
 「ねえ、先生を救い出さなくちゃいけないわ。急ぐのよ。」
 二人は手を繋いで、外から再び屋敷の方に走り寄るのだった。

 幸い、男は玄関に施錠はしていなかった。忍び足でホールに入ると、男の荷物を探す。
 「あった。あれだわ。」
 恵子が先に見つけて指さすと、ホールの隅の床に見慣れないリュックサックが落ちている。中から手錠やら鎖やらが幾つも出てくる。その中から細いチェインに括られた鍵の束を見つけ出す。
 「ね、これの鍵じゃない?」
 恵子が指さしたのは、自分達が嵌められている両手首の手錠だった。幾つか試してみると、すぐに手錠の鍵が開いた。更にはリュックの奥から見慣れない携帯用の髭剃り機のようなものが見つかる。

美鈴

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