留守番 完結編 第二部
二十九
「あ、あの・・・。美鈴は?」
「ああ、お嬢さまでしたら恵子さまがいらっしゃるというので今アイスクリームを買いに出てらっしゃいます。私が行くと申したのですが、どうしてもご自分で買いに行くと仰られて。すぐに戻ってくると思いますので、こちらのラウンジでお待ちください。」
恭しくお辞儀しながら案内する執事という男に従って、薦められたラウンジのコーヒーテーブルの席に着く恵子だった。
「へえ、噂には聞いていたけど、凄いお屋敷なんだ。」
辺りを見回しながら恵子は思わず感想を口にする。
「今、お茶を持ってまいります。」
男はそう言って厨房のほうへ姿を消す。
(アイスクリームだなんて。そんな気を使わなくてもいいのに。)
そんな事を考えながら、恵子は観たこともない立派な屋敷のラウンジを興味深げに見回すのだった。
(あれは何かしら・・・。)
玄関ホールを通り抜ける際に、ホールの中央に何か大きなものが立っているのが気になったのだ。恵子が座ったラウンジの席からもそれは見通せるのだが、上からシーツのようなものが被されているのでその下に何があるのかまでは見て取れない。
(美鈴が来たら聞いてみよう。)
何の不審も抱かずに、恵子は座って執事がお茶を運んでくるのをただ待っていたのだった。
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