留守番 完結編
十二
「上着はその上の段にあります。」
美鈴はスコートを着けると両腕で裸の乳房を蔽い隠しながら男に教える。
「なんだ、上も着たいのか。」
「あ、当り前ですっ。」
男は仕方ないなあと言わんばかりに美鈴が教えた一つ上の段の抽斗からテニスウェアの上着らしきものを見つけ出し、美鈴に放って寄こす。
「あの・・・。これがあると着れないんですが。」
美鈴は首輪から伸びている鎖を男に持ち上げて指し示す。男はにやりとしてクロゼットを離れ美鈴の近くへやって来る。
「貸しな。」
首輪の鎖を外す代わりに、投げて寄こしたテニスウェアの上着を美鈴から奪い取る。ベッドポストに繋ぎ留めた手錠のような留め環をポケットの鍵で外すとテニスウェアの上着にさっと鎖を通してから再びベッドの桟に繋ぎ留めてロックしてしまう。
「これで着ることが出来るだろ。」
美鈴は簡単に自由にはして貰えないのだと悟りながらも、取り敢えず裸を晒したままでいることから逃れられるのならと、大人しく首輪をされたままテニスウェアを首に通して身に纏う。
「あ、あの・・・。下着は?」
美鈴はおそるおそる男に訊いてみる。
「ん、下着?」
切り出しにくい質問だったが、ずっとノーパン、ノーブラで居る訳にもゆかない。
「下着は何処にしまってあるんだ?」
男の問いに一瞬詰まってしまう美鈴だった。男に下着をしまっている場所を教えて、自分の下着を漁られてしまうことは避けたかった。しかしここで男の機嫌を損ねて下着無しでずっと居る訳にも行かないと思ったのだった。
「あ、あの・・・、あそこのドレッサーの隣にあるチェストの抽斗の中です。」
美鈴は正直に下着を仕舞ってある場所を男に教える。首輪が鎖でベッドの枠に繋がれている以上、自分で取りにいくことは叶わないのだった。男は何の遠慮も無く美鈴の下着が詰め込まれているチェストの抽斗を開ける。
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