留守番 完結編
二十三
「あ、恵子と写っている写真・・・。何時の間に?」
「お前の部屋にあったものだ。後ろにいる美人は誰だ?」
「担任で、テニス部顧問の井上先生です。」
「ふうん、なかなかそそる顔だな。」
いやらしそうな目で担任の女教師の姿を眺めている男の顔に、美鈴は嫌な予感を感じる。
「休みの届けって、どういう事ですか?」
美鈴の問い掛けに男が手にした携帯を操作して見せたのはラインの画面だった。
”恵子、お願いがあるんだけど”
”どうした?”
”朝から貧血気味で、頭がくらくらするの お休みの届け先生に出しといてくれない?”
”いいけど大丈夫なの 独りなんでしょ?”
”大丈夫よ 少しじっと寝てれば治ると思う”
”昨日、泊りに行けなくてご免ね”
”いいのよ 代わりに今日来れば?”
”いいの? じゃ学校終わったら行く”
”待ってる ❤”
「こ、これっ・・・。成りすましじゃないの。どういう事、今日来ればだなんて。ま、まさか・・・。」
「ふふふ。どうせなら、いろんな味を試してみたいからな。」
「味ですって? 恵子を誘き出して何かしようというつもりじゃ・・・。」
手を出して自分の携帯を取り返そうとした美鈴だったが、男にさっと引っ込められてしまい鎖に繋がれた身では届くことが出来ない場所に置かれてしまう。
「さて、それじゃあ準備をして来るんで、その間にお前も何か食べておけよ。」
(準備? 何をするつもりだろう・・・。)
不安になりながらも昨夜から何も食べていない美鈴は男が居なくなったところで、冷蔵庫を開けて取り敢えず口に出来そうなものを探すのだった。
男が戻って来た時、美鈴は解凍した食パンを残っていた牛乳で喉に慌ててなんとか流し込んだところだった。
「腹は満たしたか?」
男は美鈴が今しがた口にしたらしいものを覗きこんだ後、前手錠を片方だけ外す。
「さ、食事の準備はもう済んだんだからエプロンは外して貰おうか。」
美鈴は口答えしても無駄だと悟っていたので、黙ってエプロンを外して男に手渡す。
「両手は後ろだ。」
おとなしく美鈴が両手を背中に回して背を向けると、ガチャリと言う音と共に、全裸のまま前を隠すことも出来なく後ろ手の手錠を掛けられてしまう。
「さて、今日は外へ散歩といこうか。」
「散歩ですって? 裸のまま外に出ろって言うの?」
「心配するな。屋敷の外じゃない。お前の家の庭は相当広そうだからな。裏手の庭を散歩してみようじゃないか。」
男は有無を言わさぬ調子で美鈴の首輪に繋いだ鎖を引っ張って行く。
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