留守番 完結編



折檻部屋

 十八

 「この部屋だと思います。」
 男がドアの鍵を開けて、先に押し込まれるようにして部屋の中に入った美鈴は、薄暗い部屋の何とも言えない雰囲気に思わず息を呑む。
 暗いのではっきりとは見えないのだが、壁に吊るされた様々なものは見てはいけないもののように思われた。部屋の反対側には確かにビデオに映っていた暖炉のマントルピースのようなものがあり、その両脇に鉄の輪のようなものが埋め込まれた金具からぶら下っている。
 「ふうむ。なかなか趣味のいい部屋だな。ここで夜な夜なこっそりと夫婦のお愉しみをやってた訳か。」
 「子供の頃、ここへ来た時はこんな部屋じゃなかった筈だわ。」
 「さあて、それはどうかな? 子供だから、何をする部屋か気づかなかっただけだろ。物心ついたあとの子供には見せられない部屋のようだからな。」
 「こんな部屋で、パパとママが・・・。まさか。」
 「おやっ。あれは鞭のようだな。」
 男が指し示した壁には確かに鞭らしきものがずらりと並んで吊るされている。
 美鈴は思わず、先程いやいや見せられた母の痴態を思い出して、映像をだぶらせていた。

鞭調教

 (ママが、この部屋でパパから折檻を受けていたというの・・・。)
 想像しないようにしようとしても、どうしても母が鎖で繋がれて、今にも鞭打たれようとしている姿が浮かんできてしまうのだった。
 「どうだい、お嬢さん。この部屋に一晩、磔にされたまま過ごすってのは?」
 「そ、そんな・・・。嫌です。絶対・・・。」
 「何をそんなに怯えているんだ。まだ、マゾの血には目覚めていないってわけか。ま、いいだろ。それじゃ、地下室以外も案内して貰おうか。」
 一旦、地下室を出された美鈴は屋敷の中をぐるりと案内させられたのだった。男が一つひとつの部屋を調べて廻っているのは何の為なのかまだ想像もつかない美鈴なのだった。

 一通り、屋敷中をぐるっと巡って案内してきた美鈴は男と再び玄関ホールに戻ってきた。ホールに先に入った美鈴は、ホールの隅にあるソファの長椅子の後ろに白い布きれが落ちているのを目聡く見つけ、さり気なく男に鎖で牽かれながらもそこへ近寄る。ひと目見ただけで、それは等身大の屹立するペニスを生やしたブロンズ像に顔を押し付けられそうになって気絶した後、剥ぎ取られたに違いない自分のショーツだと気づいたからだ。何とか手が届くところまで近寄ったところで、美鈴はさっと腰を屈めてそれを拾い上げ手の中に丸めて隠す。
 「だいたいこの家の造りは頭に入ったので、今度は俺ひとりで家探しして来よう。お前はその間、大人しくこの広間に繋がれているんだ。」
 そう言うと、後ろ手の手錠の片側だけを外すと二階から降りてくる階段の手摺りに繋ぎ留めてしまう。美鈴は片手だけを挙げた状態で階段の傍から殆ど身動き出来なくされてしまう。それでも男が二階の方へ上っていって姿を消すと同時に隠し持っていたショーツをこっそり身に付けるのだけは成功したのだった。

美鈴

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