妄想小説
女敏腕警護官への逆襲
四十七
「ミスターZは何処行ってるんだろう。車はあったからもう着いている筈なんだが。」
「多分、監禁しているあの女捜査官のところだろう。」
「ああ、そうだった。様子を見に行ってくるか。」
男たちは完全に油断している様子だった。
「動かないでっ。両手を挙げて。」
物陰から飛び出した冴子はリボルバーの銃口を男たちに向けながら叫ぶ。
「お、お前・・・。何時の間に・・・。」
四人は両手をゆっくり挙げて冴子の方に向き直る。
「銃を持っているでしょ。ゆっくりと出して床に置くのよ。言っておくけど、私、射撃は得意中の得意よ。少しでも変なことをしたら撃つわよ。」
男の一人が急に懐に手をやって拳銃を取り出そうとするので、すかさず冴子はその袖口めがけて一発ぶっ放す。
「ひぇーっ。」
袖口に穴を開けられた男は、堪らず再び両手を上に挙げる。
「言ったでしょ。今のは外したんじゃなくて威嚇よ。変なことしたら今度は容赦しないわよ。」
「わ、わかった。撃たないでくれっ。」
男たちは慎重にゆっくりとそれぞれの拳銃を取り出すと銃身の方を持ってゆっくりと床に下す。
「そしたらその拳銃をこっちに向けて床を滑らせて渡すのよ。」
冴子は男四人を残らず隈なく注視して、少しでも変な動きをしようとしたら引き金を引くつもりだった。
「待ちな。アンタの方が銃を置く番だよ。」
突然後ろから声がして冴子が振り向くと、朱美が下半身裸で股間を剥き出しにしたままぐったりしている雄太の首に腕を回して立っている。しかももう一方の手にはギラリと光るナイフが握られていて、その刃先は雄太の剥き出しの陰茎の根元に突き当てられているのだった。
「言うこと素直に聞かないと、すっぱりやるよ。この情けない男のちんこをね。」
雄太は両手を後ろ手に縛られているだけでなく、相当痛めつけられた様子で立っているのがやっとという感じで、とても反撃など出来そうもなかった。
「うっ・・・。」
冴子は迷った。あと一歩で大臣を救える。しかし不出来とは言え雄太は身内の部下だ。見捨てる訳にはゆかないと判断して、投降することを決心したのだった。
冴子がゆっくりとリボルバーを置くと、男たちが一斉に自分の拳銃を取り返し、冴子に向けるのだった。今度は冴子が両手を挙げるしかなかった。
形勢が逆転してしまったのはあっと言う間だった。
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