妄想小説
女敏腕警護官への逆襲
三十八
「えっ。こ、これは・・・。」
雄太は一色から見せられた画像を見て思わず絶句する。
「これは、一条先輩じゃないですか。」
「やはり君もそう思うかね。この様子からすると、一条捜査官は敵のスパイ達から拷問を受けているようだ。」
画面に移っている画像では全裸の大股開きの状態で壁に磔にされた冴子が剥き出しの股間に鞭を当てられているのがはっきり見てとれる。
「こんな画像をどうして・・・?」
「こちらの諜報機関が、敵国のスパイ同士の通信を傍受した中に入っていたのだ。」
「何という事だ・・・。」
「それでなんだが、菱田大臣の戻りのルートは敵に洩れている可能性が高い。それで帰りのルートでも機動隊とパトカー白バイによる併走の護送車の方にはダミーの贋者を乗せて、往きと同じ様に私と君とで別の護送車で別ルートを使って送っていったほうがいいのではと考えている。」
「そ、そうですね。でも、一応、本部にも相談してみないと・・・。」
「君は現場の総指揮官を任されているのではなかったのかね。君がここから本部に連絡すると、敵のほうの情報傍受に引っ掛かってしまう可能性も高い。」
「うっ。それもそうですね。・・・。わかりました。私の判断で別の護送車で別ルートを使うことにします。同乗はお願い出来ますね。」
「勿論だとも。」
こうして、大臣は往きと同様に冴子が大臣を乗せて来た装甲車まがいの外国製ワゴン車で大臣を秘密裡に護送することになったのだった。
往きの顛末を知っているだけに、菱田大臣は護送車での摩り替えに難なく応じてくれたのだった。
「君、往きの車で私を独りで護送してくれた女性の捜査官はこのところ姿を見ないがどうしてるのかね?」
「はっ、大臣。現在は別の任務に就いておりまして、私が代わりを仰せつかっております。」
冴子が囚われの身になっていると明かす訳にもゆかず、雄太は適当に誤魔化す。
「彼女なら私は絶大の信頼を置いているので安心なのだが・・・。」
「大丈夫です、大臣。私が同じように護衛の任務を最後まできっちり果たしますので。」
「そうかね。」
「大臣。彼は往きに護衛任務に当ってくれた一条冴子捜査官の直属の部下で、彼女同様信頼できる男です。」
隣で一色がそう口添えするので大臣も納得した風だった。
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