女警護官

妄想小説


女敏腕警護官への逆襲



 一

 「という訳で、君には菱田外務大臣の警護にあたって貰いたい。那須高原の大臣の別邸で行われるナディア公国国務大臣との非公式の会談への往き返りの護衛ということになる。」
 「先方の国務大臣の護衛は?」
 「ナディア公国から軍隊が派遣されるそうだ。我が国はだからと言って自衛隊派遣という訳にもゆかん。勿論、警視庁機動隊、地元県警の応援などはあるのだが非公式ということもあってあまり目立つ訳にはゆかんのだ。」
 「なるほど。何か懸念でもあるのですか?」
 「我が国とナディア公国が友好的関係になると周辺諸国にはそれを歓迎しない意向を持つ国も少なくないのだ。何らかの妨害行為が計画される惧れもある。」
 「そうですか。で、誰と組むのですか?」
 「君には何度かチームを組んでいる杉本捜査官に付いて貰うことにする。後輩を育てると思ってよく指導してやって欲しい。」
 「杉本・・・、雄太ですか。」
 「何か問題でもあるのかね?」
 「いや、そういう訳ではありませんが・・・。ただ、彼は何かと功を急ぐ傾向がありますので。」
 「まだ若くて経験が浅いからな。早く大きな実績を挙げたいという焦りがあるのだろう。」
 「その焦りが隙を作り、そこを狙われる惧れがあります。」
 「それをうまく手綱を引きながら指導するというのが先輩として君に求められるところなのではないかね。」
 「はあ、そうですが・・・。」
 しかしそれは冴子にとってリスクでもある。
 (任務の度にそんなリスクを負わされていたら命が幾つあっても足りないわ。)
 「それからもう一つ。相手国のナディア公国だが、軍隊を派遣してくるのだが何分日本語でのコミュニケーション不足という懸念がある。それで日本語の出来るエージェントを雇っているそうだ。一色数馬という男で、海外での傭兵経験が長いそうだ。任務に入る前に一度コンタクトを取っておいてくれ。」
 「一色、数馬・・・。」
 上司である管理官の牧島哲司から一色数馬と記された連絡先が記された紙きれを受け取った冴子は一瞬怪訝そうな表情を露わにする。
 「出自は確認が取れているのですか?」
 「この手のエージェントは個人情報を隠しているのが普通だ。ま、その辺も含めて探りを入れながら当たって欲しい。」
 「分かりました。」
 牧島管理官の元を辞した冴子は、ナディア公国のエージェントに雇われたという一色に逢っておく為に部下である杉本雄太を呼び出すのだった。

saeko

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