妄想小説
女敏腕警護官への逆襲
二十一
男は冴子の目の前に手錠と首輪の鍵らしきものをポトリと投げて落とす。あくまでも冴子の両手が自由になったところには男は近づかないつもりなのだった。足枷に繋いだ鎖をジャラジャラ言わせながら何とか鍵まで這いつくばって近寄ると後ろ手で鍵を拾いあげる。
後ろ手のまま手錠の鍵穴を探り当てて、漸く両手が使えるようになった冴子は思わず裸の乳房を抱えるようにして隠す。
「さ、まず上半身だけ服を着るんだな。」
男が脱衣所から持ってきた冴子の服をブラジャー、シャツ、上着だけ放り投げる。
「よおし。じゃ今度は下半身にも服を着せてやろう。ただし、その前にもう一度首輪と手錠は嵌めて貰うぜ。」
首輪と手錠が投げて寄越されるが、それには長い別の鎖が繋がっているのだった。
冴子には渡された鎖の付いた首輪とそれに繋がる手錠を再び後ろ手に嵌めるしかないのだった。男は更に用意周到だった。洗面所に置いてあったと思われる背の高い丸椅子を持ちだしてきて冴子の前に置くと、上にあがるように命じたのだ。その意図は鎖を使って冴子を身動き出来ないようにすることだった。冴子が嵌めさせられた首輪から伸びる鎖が椅子のすぐ傍のカーテン用の太いパイプの上に通されギリギリまで引かれて壁に固定される。
高い丸椅子は不安定でちょっとバランスを崩せば転げ落ちそうだった。そしてそれはパイプを通した鎖に依って首を吊られてしまうことを意味していた。
「言う通りにしたわよ。さ、足枷を外して頂戴。大丈夫よ。蹴り技は使えないことはようく分かっているから。そんな事をしたら自分から首を吊る羽目になってしまうものね。」
「よく分かっているじゃないか。それじゃ足枷を外してやろう。」
上半身が首輪と鎖で身動き出来なくされてから漸く冴子は足枷の拘束から逃れることが出来たのだった。しかし狭い丸椅子の上に立たされて身動きは出来ない。
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