立往生車

妄想小説


女敏腕警護官への逆襲



 四

 高速道路を避けてわざと一般道の峠越えの山道を選んだ冴子と大臣の車は細い曲がりくねってワインディングロードを抜けようとしていた。その時、突然道を塞ぐように林道に横になった黒いワゴン車とその近くに思案に呉れるように立ちすくむ四人の男の姿を見つけて冴子は急ブレーキを掛けたのだった。ワゴン車は完全に道路に対して横を向いて停まっていて、その横を擦り抜けるのは不可能そうだった。
 「パンクか何かかしら。大臣。様子を見てきますので、ドアを内側からロックして私が戻ってくるまで決して外に出ないでください。」
 「わ、わかった。」
 不安そうに大臣が首を竦めながら答えるのを聞いて、冴子はシートベルトを外して外に出る。銃を携帯するか迷ったが、一般人だった場合に相手を刺激するのを避ける為に敢えて銃は置いて出ることにする。

 「どうしたんですか。パンクですか?」
 冴子が近づきながら男たちに声を掛ける。
 「ああ、カーブで急にハンドルを取られて・・・。どうも尖った石を踏んでしまってパンクしてスピンしたみたいなんですよ。」
 「ああ・・・。あの、車。少しだけ動かせます? ちょっと先を急いでいるので。」
 「ああ、そうですか。お独り・・・ですか? こんな山道で・・・。」
 「え? ええっ・・・。」
 一瞬だけ冴子が車の方を振り返ったのを男たちは見逃さなかった様子だった。リーダー格らしい男の一人が他の男たちに目配せすると男二人がすすっと冴子の背後に廻る。男たちは冴子が独りらしいことを悟って、何か良からぬことを考えた様子であることに気づき冴子も身構える。
 「な、何っ? 貴方達・・・。何か変なこと、考えてない?」
 「ふふふ。こんな誰も来ないような山の中で出遭ったんだ。少し愉しんでもいいんじゃないか?」
 男四人が徐々に冴子に向かって距離を詰めていた。

saeko

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