妄想小説
女敏腕警護官への逆襲
十二
冴子は、手にしたタオルで額の汗を拭う。
緊張の連続が、こめかみのほつれ毛の辺りに汗の臭いをこびりつかせているような気がした。ゆっくり風呂に浸かって汗を流すのも、暫くぶりのような気がする。それでも、職業柄、緊張感を完全に弛緩させることが出来ない。因果な商売だと、冴子は思う。
ポチャっと水音がする。風呂場だから、水音は極自然な音だ。が、動物的な勘で、それが尋常な物音ではないのを感じ取っていた。ゆっくり湯から手をだして、そばに置いたリボルバーケースに手を伸ばす。
指先が革のストラップを探り当てると、音を立てないようにゆっくり引き寄せる。目は音がしたほうを鋭く窺う。脱衣所の方角だった。
突然、閃光が走る。
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