妄想小説
女敏腕警護官への逆襲
二十六
やっとのことで、外に突き出した脚の先が地面を捉え、何とか冴子は外に這い出ることが出来た。
「ねえ、もう目隠しは外してちょうだい。」
「まだ駄目だ。家の中に入ってからだ。」
(どうしてもここが何処だか分からなくしたいのね。時間からして、あの別荘からそんなに離れては居ない筈だとは思うけど・・・。)
冴子は観念して、男から首輪の紐を牽かれるままに引き摺っている足枷の鎖がジャラジャラ音を立てさせながらゆっくりと足を進める。
後ろで扉が閉まる音がしたところでやっと冴子は目隠しを外される。何処かの山小屋か何かのようだった。目の前に更にドアがあって、男は冴子の首輪に繋いだ縄を持ったままドアの方へ入っていく。
「おい、戻ったぞ。みんな、揃っているか?」
「ああ、ミスターZ。お帰りなさい。待っておりやした。皆、揃っています。」
「よし・・・。じゃ、入って来な。」
最後の言葉は冴子に向けられたもののようで、再度首輪の縄がぐいっと引かれる。
「あ、てめえはあの時の・・・。」
冴子はドアの向こうに入っていくと、数人の男たちが冴子の顔を見て一斉に身構える。間違いなく大臣を送っていく途中に襲撃を掛けてきた男たちだった。
男たちは何時でも殴り掛かれる体勢で構えていたが、冴子は足首に引き摺っている鎖を見て事態を漸く呑み込み始める。男たちを睨みつけている冴子だったが、その首には首輪が巻かれそこに繋がれた縄はミスターZが握っているのだった。
「お前。両腕を後ろに隠しているが・・・、もしかして。」
男がおそるおそる冴子の背後に回り込んでいき、両手首に手錠が咬まされているのを確認してやっと緊張の糸が解けたようだった。
「なあんだ。お前さん、後ろ手に手錠を掛けられていたのか。安心したぜ。」
男たちは冴子に散々痛い目に遭わされて、相当震え上がったいたようだった。しかし冴子が後ろ手の手錠の上に足枷まで嵌められているのに気づいて態度が一変したのだった。
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