妄想小説
女敏腕警護官への逆襲
四十六
「手を挙げて。一色、いやミスターZと言ったほうがいいのかしら?」
「お、お前・・・。何時の間に?」
「銃を床にゆっくり置いて、こちらに滑らせるのよ。」
「わ、わかった・・・。」
一色が言われた通りにすると一色の銃を拾いあげ、代わりに持ってきた手錠を一色の元に滑らせる。
「その柱に両手を回して自分で手錠を掛けるのよ。後ろ手にね。」
今度は冴子が一色の自由を奪う番だった。
「そしたらぐるっと回って、手錠をよく見せて。」
冴子は一色がちゃんと柱を通して両手に手錠を掛けたことを確認すると、ゆっくりと近づいていっていきなり持っていた拳銃のグリップ部分を使って一色の鳩尾に一撃を与え、気を喪わせる。呻き声を挙げながら一色が柱の根元に崩れたところで、一色のポケットを探り手錠の合鍵や別の武器を持っていないかを確認する。一色が大臣を連れてきた車のキーや大臣を監禁しているらしい部屋の鍵も奪い取る。
(急がなくちゃ・・・。)
冴子にはさきほどの会話から大臣が地下の部屋に監禁されているらしいことは分かっていた。その部屋に脱兎のごとく走って向かう。
「大臣、無事ですか?」
「ああ、その声は一条君だね。応援に来てくれたのかね。」
「応援?」
大臣の返答を不審に思いながら部屋の鍵を開ける。
「すぐにここから出ましょう。ここは危険です。」
大臣を連れて上にあがろうとした時、車が近づいてくるエンジン音が聞こえた。
「連中が戻ってきたようです。撃ち合いになる可能性があります。もう一度、この部屋に入っていてください。」
大臣を押し戻すともう一度部屋に鍵を掛けリボルバーを手にしたまま一階に戻る冴子だった。
男たち四人が入ってくるのを一階の物陰に潜んで待ち構える。
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