妄想小説
潜入捜査官 冴子 第二部
四十一
「この奥です。」
そこはいつも奈美が鬼源と秘密のプレイをしている奥座敷だった。
「奈美です、社長。」
襖の前で、座敷の中に向けてそう挨拶すると自分を連れてきた男に襖を開けるよう促す。男がすっと開いた襖へ敷居を越えて中に踏みこむ。いつも鬼源が使っている回転式の座椅子が床の間の方を向いて背を向けて座っている。冴子は男に出て行くようにと顎で合図して男が出て襖を閉めたのを見届けてから座椅子の方へあらためて向き直る。それに合わせたかのように回転座椅子がくるりと廻る。
「あ、貴方・・・。」
座椅子にふんぞり返って座っていたのは鬼源ではなく氷室恭平なのだった。そしてその手には雄太のものらしき携帯が握られていたのだった。
「騙したのね。」
「ほう、妙なことを言うじゃないか。騙してたのはそっちの方じゃないのか。この携帯の持主と変な遣り取りをしながら。」
そう言って恭平が手にした携帯の送信ボタンを押すと、冴子の胸元に押し込んだ携帯がブーン、ブーンと唸り音をあげるのだった。
「雄太をどうしたの?」
「雄太っていうのか、あの若僧は。あとでゆっくり逢わしてやるよ。まあ、慌てることはない。時間はたっぷりあるんだからな。」
縛られてしまっていて何も出来ない冴子に、恭平は口を歪ませてにやりとするのだった。
「おい、お前等。もう入ってきていいぞ。」
恭平が襖の向うに声を掛けると、廊下に待機していたらしい手下の子分等が一斉に座敷に入ってくる。縛られて何も出来ない冴子を囲むと色めき立つ。
「おう、奈美じゃねえか。やっぱりお前が裏切りもんだったんだな。どうもおかしいとは思ってたんだ。こってりと焼きを入れてやるぜ。」
「待て、待てっ。俺はこのアマにアンシャンテで恥を掻かされたんだ。まずはおいらがこいつに煮え湯を呑ませてやる。おい、こいつの着物を捲り上げて尻を出させろ。」
以前、アンシャンテで指を捩じりあげられて床に伏せさせられたジローがいきり立って名乗りをあげる。すると他の者たちが縛られて何も出来ない冴子の肩を取って土下座の格好をさせると襦袢の裾を捲り上げて裸の尻を突き出させる。その間にジローはズボンから革のベルトを抜き取ると鞭の代りに振り上げるのだった。
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