妄想小説
潜入捜査官 冴子
十八
冴子は完全な敗北を認めざるを得なかった。クリトリスの裏側に貼りつくように添えられた指の絶妙な動きがどんどん冴子の理性を麻痺させていくのだった。
冴子たち女性潜入捜査官は敵に捕らえられて凌辱されることも想定内の事だ。時には自ら相手を信用させる為に身体を開かねばならない場合もある。そんな時に備えてわざと感じている事を装って昇天する振りをすることにより、より早く凌辱を終わらせるという高等テクニックも身に付けている。しかし源蔵の指のテクニックの前にはそんな振りは最早何の意味も持たなかった。感じない様に自分を抑えることすら叶わなかったのだ。
「ああっ・・・。」
大きな喘ぎ声と共に白眼を剥いて倒れ込んでしまう。遂に冴子は源蔵の指技の前に屈して昇天までしてしまったのだった。
はっと冴子が正気に返って辺りを見回すと、もはや座敷には源蔵の姿はなかった。自分の身体に巻かれていた筈の荒縄は既に解かれてどこにも見当たらない。手首に薄っすらと残る痣の様な痕だけが縛られていたことの証しのように残っているだけだった。
冴子は起き上がって乱れた着衣を直し帯を締め直す。それからそっと襖を開けてみると、廊下の端に自分をこちらへ送ってきた男が正座しているが見えた。相変わらずサングラスをしているので表情は見て取れない。
「そこで待ってたの?」
「へえ。お姐さんをクラブまでお送りするよう命じられております。」
「社長は?」
「もうお出掛けになられました。」
「そうなの・・・。じゃ、車を出して頂戴。」
どれくらいの間、自分は気を喪っていたのか見当がつかないが、運転手は相当待たされていたに違いないと冴子は思った。
(何て事かしら。捜査官が指一本でイカされてしまうだなんて)
冴子は自分の不甲斐なさに情けなくなりながら源蔵の屋敷を後にしたのだった。
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